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「あっ、芽が出たよ」
「これからどんどん大きくなるわよ。楽しみね」
大きな芽は、大きな葉を広げ始めた。
「初めて育てる種だけど、ちゃんと育つかなあ。」
「これまでも色んな種を上手に育てたもの。大丈夫よ。でも、この種は今までとは比べ物にならないくらい、たくさん栄養をあげないといけないみたいね。」
遺伝子を植物の細胞で増殖させる技術によって、失われた多くの生物を再生している。一般の家庭で種を育てることで、再生する生物の数を増やしているのだ。
「うわあ、つぼみができたね。もうすぐ開きそう。」
背丈も伸び、増えた葉の間にできた大きなつぼみが花開こうとしていた。
「うわあ、可愛い。」
「ほんとうに可愛いわね。もう少し育ったら花が落ちて、二本足で歩けるようになるんですって。そしたらお部屋で一緒に暮らせるのよ。」
「いろいろ教えてあげるんだ。名前をつけなきゃね。ヒトさんに。」
花の中の赤ん坊をやさしくなでた手は、光沢のある銀色をしていた。
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