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「中村さん、会も終わりだから良かったら一緒に帰らない?」
早川くんがそんなことを言うなんて思ってもみなかったから少し沈黙してしまった。
だって、ボランティアの時に少し話したことがあっただけで…第一、私は早川くんのことはほとんど知らなかった。
でも、変な人じゃないしここは空気を読んだ方がいいと思った。
「うん、あれ?私のうちと方向が同じなの?」
「中村さんちを知らないけど帰りながら少し話さないかな…と、思って」
なんだか急にドキドキしたけど、平静を装った。
私は、早川くんが隣の隣のクラスの人だと初めて知ったのだった。
「いたかな?会ったことないよね?」なんて言ってしまった。
早川くんは、一見、とても元気そうだけど、学校に来ていないと話してくれた。
何故かわからないけれど小学校のいつの頃からか、教室のようなパッケージされたような所に入れなくなったんだと言っていた。
そんなことがあるなんて、その時まで私は全く知らなかった。
夏菜子は、小学校が同じでよく他の子たちと自宅に遊びに来てくれていたんだそうだ。
その時の友達の名前が、今の生徒会長の細川くん、学年トップの中野くんや学年の有名な子ばかりで驚いたのなんのって。
そしてその子たちは、今でも来てくれていると言っていた。
そして早川くんは、高校こそはちゃんと通いたいから、リハビリのつもりでボランティアに参加しているんだと話してくれた。
あんな明るく振る舞っていた人が人知れず悩みもがいて頑張っていたなんて…。
今までも、学校に通えない子はいたけど、怠けているんだろうくらいにしか考えていなかった。
何だかわからないけど、将来において、大事な何かを見つけたような瞬間だったように思う。
そういう、精神的な何かで苦しんでいる人を助けたいと思う気持ちが芽生えたんだと思う。
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