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いくら店内がうるさいからって、耳ざとい人間が聞いているかもしれないと周りを見回したが、きょろきょろと挙動不審なのは僕ひとりで、酔っ払いたちは僕たちの存在にすら興味を抱いていない。
「そんなこと、軽々しく人に言ってはいけないですよ」
だけど万が一がある。小声で注意を促すと――
「あなたにだけは知っていてほしいから、勇気を出して話したんだけどな」
目の据わった日向野くんの、見つめるさきは僕の目。やっかいなものに捕まってしまったと思いつつ、速まる心音はアルコールが回り始めたせいだと、僕はまだ心の中で悪あがきの言い訳をしている。
「僕は知りたくなかったです」
そして思わず本心。ため息までこぼれる。
「つれねーの」
くわえ煙草のまま片手で頬杖をついて楽しそうに笑う日向野くんは、強敵かもしれないと思った。
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