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「監督のファンの方も、普段あまり映画を観ない方も、誰が観ても必ず楽しめる映画です。九十分で素晴らしい映画体験ができるから、絶対観るべき」 「言いきりましたね」 「だって、観なきゃもったいないよ。こんなおもしろい映画」 「僕もそう思います」 「でしょ」  やわらかく笑んでいた目が、キラッと一瞬の力を宿す。作品によってずいぶん印象が変わる様々な感情を秘めた瞳は、僕とのインタビューでは基本、いつも穏やかに凪いでいる。だから時おりふと漏れる鋭い表情には彼の天性の俳優気質を感じるし、同時にスクリーンを通さないその力強い眼差しにドキドキさせられもする。  共感を求められ、頷いたのと同時に、ICレコーダーの停止ボタンを押した。 「ねえ、いつも仕事終わって寄り道したりしない? すぐ家に帰る? ちなみに家どこ?」 「内緒です」 「光嶋さんはさ、何回目で俺の誘いに乗ってくれる予定?」  ICレコーダーが止まった途端、遠慮のない質問がどかどか降ってくる。ちなみに食事に誘われたのは今日で三回目。日向野くんはインタビュー後に必ず声をかけてくる。 「どうしてきみは、そんなに僕に興味を持ってくれるんですか?」  スターの日向野くんと違って、僕はただの一般市民だというのに。 「秘密、と言いたいところだけど、理由を打ち明けてもいいよ。一緒に食事をしてくれたら」
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