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「解りますよ、その気持ち。私も就活生の時は、お客様と似た心境でした。…よく、縁があるところにたどり着くと言われることがあると思いますが、お聞きになったことはありますか?」
私が聞くと、お客様は頷いた。
「母がよく言ってます。縁があるところに向かうものなんだって。」
「焦らず、お客様のペースで取り組まれてはいかがでしょうか?最終的に縁のある企業に巡り会って活躍できることを祈っております。」
私が微笑むと、彼は納得したように何度も頷いていた。
「そうかもしれません。ありがとうございます。」
お客様は深々とお辞儀をした。とても美しい最敬礼だった。
彼が支払いを済ませた後に、入口付近で彼の名前を聞き、名前と月桂樹の花言葉を書いた栞を渡した。
しかし、お客様は栞を使うことがないと仰ったので、コースターに替えて渡した。
「わざわざ、ありがとうございます。大切にします。」
彼は嬉しそうに微笑んで会釈した。
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