3、ある恋人たちの悩み

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3、ある恋人たちの悩み

11月。紅葉が色づき、紅や黄に雲一つない秋の青空が映えている。 時折、程よく冷たい風が店内の窓を通して入ってくる。 お客様がいない時間は、1人で紅茶を淹れて嗜むことが多い。今日は、レモンティーにした。 1口飲み、息をついた時だった。 ボーン、ボーン…。 掛け時計の鐘が鳴った。 (お客様がいらしたようですね。) カウンターに立って、相手が来るのを待った。 チリンチリン、とドアベルが鳴ってお客様が入店してくる。 今回は2人組だった。女性と男性1人ずつ。 彼らはテーブル席に座った。 「いらっしゃいませ。ご注文がお決まりになりましたら、お声がけください。」 メニュー表をテーブルに置いて、立ち去った。 しばらくして、声がかかりメモを持ってお客様のもとへ向かう。 「ご注文は如何されますか?」 「苺のタルトと、ミントティーをお願いします。」 女性が先にオーダーする。 「アップルパイと、アールグレイのアイスティーでお願いします。」 男性が答えた。 「ご確認致します。苺のタルトとミントティー、アップルパイとアールグレイのアイスティーがそれぞれ、お1つでお間違えないでしょうか?」 私がそう聞くと、2人とも頷いた。 「かしこまりました。できあがりまで、ごゆっくりお待ちくださいませ。」 礼をして、その場を去った。
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