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「……私は、趣味で小説を執筆していて、ある小説投稿サイトを使っております。とても楽しいですし、日々の気分転換になっています。しかし、日々の取り組みが落ち着いたら、小説を書くのをやめて、サイトはアカウントを削除しようと思っているんです。……でも、フォローしてくれている人がおりますし、私自身とても楽しく作品を書いたりユーザーの作品を読んでいるので本当に辞めていいのか迷っているんです。」
私は話し終えると俯いた。
「そうでしたか…。一つお聞きしたいのですが、お客様は、なぜ小説を書くようになったのですか?」
彼は私に訊ねながら、私が頼んだアッサムのミルクティーとプレーンのスコーンをカウンターテーブルにそっと置いた。
「もともと幼い頃から本が好きで、ずっと読書をしているんです。あるとき、ゴールデンウィーク中に、ふと物語を書いてみたいと思って書き始めました。」
「そうだったんですね。」
三森店主が微笑んで言った。
私は頷き、ミルクティーを飲み、スコーンをかじった。
「……でも、流れで始めたので、続けるかどうか判らなくて…。それならいっそ辞めたほうがいいのかなと思ったんです。でも続けたい気持ちもあって、どうすればいいのか分からないんです。」
「それで、Cozsulに来た、ということですか。」
「はい。きっとそうだったんでしょう。誰にも言う気がなかったので。」
「そうでしたか。……お客様、あなたの悩みが晴れるかもしれないものをご用意致します。少々お待ちくださいませ。」
彼はそう言うと店の奥へと入っていった。
数分して戻ってきた三森店主は、小さな四角の箱を持っていた。
「この店は雑貨店も営んでおります。商品ではありますが、相談所に来るお客様の場合のみ代金は戴いておりません。」
「どうしてですか?」
「この店を訪れる人の悩みが晴れて、これから先の人生を歩んでいくことが私のやりがいとなっているためです。」
彼はそう言って、穏やかに微笑んだ。
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