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「さて、お客様。このなかでお好きなものをお選びください。」
三森店主は木の箱を差し出した。
中を見る。
そこには、押し花の栞、押し花のコースター、表紙が押し花のアルバム、花の香りが入った香水、ハーバリウム、薬草や花のアロマオイルと、アロマキャンドルが入っていた。
「…それじゃあ、押し花の栞でお願いします。」
「かしこまりました。では、お好きな花は何ですか?」
「……特に、ないです。」
私はそう言いながら、自分は無個性だなと思った。
「…そうですか、それではこちらでお作り致しますが宜しいですか?」
「お願いします。」
私がそう言うと、彼はにっこりと微笑んだ。
「少々お待ちくださいませ。」
そして彼はまた店の奥へ去っていった。
私がプレーンのスコーンを食べ終え、アッサムのミルクティーを飲み終えたとき、三森店主がカウンターに戻ってきた。
「お待たせいたしました。
パセリ、セージ、ローズマリー、タイムの葉を散りばめた栞です。どうぞ、お守りとしてお持ちください。この4つのハーブは、ヨーロッパでは魔除けとして使われていたそうです。」
三森店主は、にこやかに微笑みながら説明してくれた。
「これからは、こうして相談しに来たお客様に、お守りとして商品を提供することにしました。
ここに来るお客様が、これから先、笑顔で毎日を過ごせるようにと願って作っております。」
彼はそう言って私の手に栞を持たせた。
すると、心に空いていた穴がゆっくりと埋まっていく感覚を覚えた。
まるで魔法がかかったかのように、思い煩っていたことが無くなったように感じた。
私は支払いを済ませ、店内を出る直後に「ありがとうございました。」と言って礼をした。
「あなたの悩みが晴れることを祈っております。」
三森店主は、深くお辞儀をしてドアを閉めた。
私は、心の奥底が軽くなったのを感じながら帰途についた。
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