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「はぁ…。」
その男性は、浮かない顔をしている。
「いらっしゃいませ。カウンター席とテーブル席、どちらに致しますか?」
私がお客様の前に来てそう言うと、彼は浮かない顔のまま「カウンター席でお願いします…。」と言った。
「かしこまりました。では、こちらへどうぞ。」
彼をカウンター席に通してメニューを置く。
「よろしければ、ご注文承っております。ごゆっくりお寛ぎくださいませ。」
深くお辞儀をして、カウンターに戻った。
男性はしばらくメニューを眺めていたが、やがて紅茶メニューを指さした。
「…あの、カモミールティーください。」
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ。」
私は、戸棚からカモミールティーの紅茶缶を取り出し、茶匙2杯分掬ってポットに入れる。
薬缶に水を入れ、火をかける。
その間に、ティーセットを用意する。
あとは、お湯が沸くのを待つだけになった。
ちらりと、お客様の様子を見る。
相変わらず、落ち込んだ様子だった。
「先程から、何かお悩みのようですが何かございましたか?」
私は、彼に問いかけた。
彼は、驚いたようにこちらを見た。
「悩みがありましたら、ご相談に乗ります。この店は本来そのために作られておりますので、何なりとお聞かせください。」
私は彼に穏やかに微笑んだ。
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