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「そうなんですか。……いただきます。」
お客様は、初めて少し微笑むとカモミールティーを1口飲んだ。
彼の強ばっていた表情が、柔らかく安心したそれに変わった。
「美味しいです。それにとても癒されます。」
彼は一息ついてそう言うと、何回かに分けて飲んだ後に紅茶を飲み干した。
「とても美味しかったです。ごちそうさまでした。」
彼は、晴れやかな笑顔を浮かべていた。
「喜んでいただけて、恐縮です。」
私はお客様に、深く礼をした。
そして顔を上げ、彼に声をかける。
「お客様、最後に数分お時間いただけますか?お悩みをお聞かせいただいた後に、どのお客様からもお聞きになっていることなのです。」
私がそう言うと、お客様は微笑んで頷いた。
「ありがとうございます。お客様のお名前をお聞かせいただけますか?ファーストネームのみで構いません。」
「僕はユヅと言います。漢字は、優しいの“優”に、克服の“克”です。」
「優克様、ですね?」
「はい。」
私は、メモ帳に優克様の名前を書いた。
「少々お待ちくださいませ。席にお座りになってお待ちください。」
そう言って、私は店の奥へ下がった。
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