軍師の嫁取り 3 ~戦の前には酒席あり~

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「あんた、そんな女の侍女なんかやめて、俺の所へ、来ないか?いやぁ、こんなべっぴんを妻にできれば、仕官話も上手く行きそうだ」 「あらまあ!仕官!どなたの元へ?」 いやいや、と、徐庶(じょしょ)は前置きし、仕官とは言い切れないのだが、州牧(ちょうかん)の所へ出入りしているのだと言った。 「そのうち、何らか機会があるかもしれない。今は、顔を売っている、それだけの話さ。俺のような、単家(たんか)、落ちぶれた家の出身など、自分の足が頼りだからなぁ。そうそう良い話は、転がり込んでこない」 「まあ!なんだか、難しいお話ですこと、私には、さっぱりわかりませんわ。残念ながら、徐庶様のお相手は、できませんわね」 しなをつくり、徐庶を相手にする月英は、ちらりと、均を見た。 均は、義姉(あね)からの合図、に慌てて、 「立ち話もなんです。どうぞ、中へ。そうだ、お二人とも、食事はまだでしょう?ああ、侍女や、支度をしておくれ」 と、勘違いしているを徐庶を、上手く取り込んだ。 ──そして、厨房は、まさに、戦場のように、殺気だっている。 お嬢様育ちの、月英が、料理などできるはずもなく、均と、童子二人で、支度をし、てんてこ舞いだった。 時折、均は、徐庶の話につきあわされ、その度、童子一人で切り盛りするはめになる。 さらに、徐庶という男、遠慮なく、飲み食いしてくれて、おーい、酒がないぞ、つまみがないぞと、次から次へ催促するのだった。 「なんて男なのでしょう。これでは、我が家の食べる物さえなくなってしまいます」 「奥様、いえ、侍女様、もう、へとへとです」 「ああ、童子、お前は、まだ小さい。よくやってくれた。少し休みなさい」 「あら、そうなると、均様、一人になりますよ?」 あのぉ、と、実に申し訳無さそうな声がした。 「あら、旦那様、どうなされました?」 「いや、皆の事が気がかりで。忙しい思いをさせて申し訳ない。そろそろ、帰すつもりでいるのですが……」 「帰れ、と言い出せないのですね?」 月英の問いに、孔明は、うなだれる。
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