軍師の嫁取り 3 ~戦の前には酒席あり~

3/8

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「暇潰し?」 「おう!今日ぐらいは、羽を伸ばせ。門が閉まっているということは、そうゆうことだ!」 徐庶(じょしょ)は、意味ありげに笑い、孔明を見る。 「うん、では、どこぞで、語り合うか」 ああ、諸葛亮よ、と、徐庶は、頭を抱えた。 「お前なぁ、ほんと、たまには、息抜きって事しないと、体に響くぞ」 「いや、私は、今のところ、大丈夫だが……」 「どこが、大丈夫なのだ。ああ、全くもって、やはり、噂通り、嫁御の尻に敷かれておるのか」 「別に、敷かれる事は、ないのだが?噂?」 お前の嫁御は、黄承彦(こう しょうげん)の、娘なのだろう?と、徐庶が耳打ちしてくる。 「いかにも、そうだが?」 「だろう?」 と、念を押す、徐庶のにやけ顔に、孔明は、はっとする。 (ああ、噂……とは、あれのことか。) 「いや、あのな、徐庶!噂は、噂であって!」 焦る孔明に、やっぱりと、徐庶は、何か納得していた。 孔明の妻、月英は、赤い髪の色黒醜女、と、世の中に広まっていた。父親である黄承彦が、娘に悪い虫が付かぬよう、あえて醜女と、傍聴していたのだ。 お陰で、月英は、表に出られず。さらに、孔明と夫婦になっても、孔明が醜女をもらったと、世間では、笑い話にしてくれるわで、月英に関する噂は絶えなかったのだ。 今では、噂が独り歩きして、醜女で、悪妻。夫を顎で使い、尻に敷いている、と、本人が聞けば、どれだけの事が起こるだろうか、想像するも恐ろしい話になっていた。 それを、孔明も、知らぬ訳がなく、またかと、ばかりに顔を曇らせると、よし!と、弾けた声が返って来た。 「諸葛亮よ!せっかく(とき)が出来たのだ。お前さんの家へお邪魔して、語り合うぞ!」 はあ? つまり、それは、単に、噂の悪妻醜女を見たいと言うことだろう。 と、孔明が言う前に、徐庶は馬にまたがり、お前も早く来いと、言ったのだった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加