軍師の嫁取り 3 ~戦の前には酒席あり~

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そして、月英は、微笑みながら、渋い顔をする孔明を出迎えている。 後ろでは、徐庶(じょしょ)が、早く紹介しろと、孔明を、こずいていた。 「あら、旦那様、そちらの方は?」 「あっ、同じ門下生の徐庶という者で、あっ、なかなか気の良いやつで……その、突然ではありますが……家を訪ねたいと言われて……」 「まあまあ、そうでしたか」 月英は、笑顔を絶やさない。 「いやあ、すまんなあ、突然押し掛けてきて。今日は先生がご不在の為、それならばと、諸葛亮の家へ邪魔しようと思いついたのだ。奥方に、上手く、取りついでくれるか?どうも、諸葛亮(こいつ)では、頼りない」 はははと、徐庶が笑った。と、同時に、カツンと、鋼の音がした。 「わっ、こ、これは、失礼しました。兄のご友人でしたか。あ、あ、畑仕事から、戻って来たばかりで、兄が客人など連れて来るのは、珍しく、つい、(くわ)を落としてしまいまして、申し訳ありません!!」 「ああ、これは、私の弟で、諸葛均、家のもろもろを手伝ってもらっていて……」 しどろもどろになっている、孔明と均の姿に、徐庶は、 「しまったなぁ、こりゃあ、奥方に、土産の一つでも、持ってくればよかった」 と、呟いていた。 「あら、なんて気が効くお方でしょう。でも、構いませんよ。奥様は、お昼寝中ですから、お客人が来ていることもわからないでしょう。いつもの事ですわよねぇ、旦那様?」 月英が、孔明へ意味深な視線を送る。 「あ、ああ、そうだ。つ、妻は、昼寝が大好きで……」 「ははは、門下生の中でも、一二を争う秀才、諸葛亮も、嫁御には頭が上がらんか!」 「そうなんですよ、徐庶様。もう少し、旦那様も、しっかりなさって頂かないと、奥様ったら、どんどん、つけあがるばかりで、本当に!」 はあっ、困ったものだと、息つく月英の姿に、徐庶は、釘付けになっていた。
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