軍師の嫁取り 3 ~戦の前には酒席あり~

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「そうですね、まっ、均様からすれば、少し冷たい言い方だったかもしれません。どうか、機嫌を直してくださいまし」 「いえいえ、そのようなことは……あの、そのですね」 均は、なぜ、面倒な男と、思いながらも、徐庶を優遇するのか、そして、長居出来ない麺を、とは、どういう意味合いなのかと、月英へ訊ねた。 「均様のお作りになる料理は、どれも良いお味なのです。つまり、あのお方は、今後、食事目当てに、当家へ入り浸るでしょう。何か旨い物を食わせろ、とね」 お忘れになりましたか?と、月英は続けた。 「……州牧(ちょうかん)の所へ、出入りしていると」 「あ!そういえば!」 寂れてしまった家の出ゆえに、仕官の機会を、自らの足で動いて、得ようとしていると言っていたのを、均は、思い出した。 「そうか、そうですね!あの方には、しっかり動いて頂かなければ!」 兄のあの陶酔ぶりは、徐庶(じょしょ)と友としての縁が続くということ。 月英は、徐庶経由の人脈を当てにしているのだ。 「ええ、ですから、呑気に我が家で、酒席三昧は困るのですよ」 「なるほど、なるほど。今日食べた分まで、しっかり元を取らさせてもらう、と言うことですか」 「あら、均様も、なかなか言いますわね」 ははは、ふふふ、と、二人の笑い声が重なった。 ──同じ頃。 すっかり酔いが回った徐庶は、千鳥足で、外にある厠で用を足した所だった。 次は、麺が待っている。急な事なので、うどん、ぐらいだろうけれど、と、孔明に告げられて、締めには、丁度良いと、喜んでいたのだが……。 厠からの帰り、裏方、調理場らしい場所を通りかかったところ、なにやら、内がかしましい。 思わず、立ち止まり、徐庶は、漏れ聞こえてくる話に聞き耳を立てるが……。
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