52人が本棚に入れています
本棚に追加
君を想う4
まだお酒の残る体でいつもより少しダルさのある朝を迎えた優也。昨日の記憶はほとんどなく、ただ眠くて左腕が重い。寝ぼけ眼を擦りながら理由の分からない重さに左腕へ目をやった。
そんな優也の目に映ったのは自分の腕枕で眠る昨日バーで出会った女性の姿。
その瞬間、眠気のほとんどが一瞬にして吹き飛ぶ。訳が分からず混乱に落ちた頭のまま自分が服を着ていないことに感覚で気が付くと、被っている物を捲り目視でも確認。
そして自身に向けた視線をもう一度彼女へ向けた。その頃にはある程度状況を理解することは出来ていたがまだ戸惑いは隠せない。
すると女性の方も目覚め、眠気に抵抗しながらも目を開け始める。
そして女性は優也と目が合うと無言のまま一瞬、驚愕に満ちた表情を見せた。だが優也同様にある程度の状況をすぐに理解したのだろう、取り乱したりはせず何とも言えない顔で優也を見ていた。
「あーっと……。おはよう」
そんな女性に対して何を言っていいか分からずとりあえず朝の挨拶をした。
「おは……よう」
一応といった感じではあるが女性の方もそれに返す。
「とりあえず確認するけど。昨日POMってバーで会ったよね? 僕ら」
「そうね。それは覚えてる」
「それで、その……。蛇希のことで盛り上がって話をしてたのは覚えてるんだけど途中からは……覚えて無くて」
「あたしも同じよ。――あとここって……」
「僕の家」
「そうよね。あたしの家じゃないもの」
「――それと変な質問して悪いけど、今、服って着てる?」
女性はその質問に納得したような表情を浮かべると顔を横に振った。
「もしかしてあなたも……」
その問いかけに対して優也はゆっくり頷いて見せた。これで一つベッドの中で二人共一糸纏わぬ姿ということがハッキリした。
「おけ。とりあえず僕らも大人だから冷静にいこう」
「そうね」
「つまり僕らは昨日POMで出会って」
「蛇希のことで盛り上がって」
「その後にここに来た。そしててn」
「̪ヤった(ヤったのね)」
同時に互いを指差しながら記憶にない昨夜のことを口にする。
「マジかよ(ほんとに?)」
その直後またシンクロしながらそれぞれ顔を反対側に向け感情のままに少し大きく叫ぶ二人。
だけどすぐに再び顔を見合わせた。
「あー、でも何となく隣の部屋でキスしたのを覚えてるかも」
「あたしも。ちょっと思い出した」
状況を受け入れる時間のように少し黙った二人だったが、その沈黙を先に優也が破る。
「おけ。今日仕事は?」
「休み。あなたは?」
「大丈夫。――とりあえずお互い服を着るってのはどう?」
「いい考えね。あたしはこっちを向くわ」
「じゃあ僕はこっち」
そして互いに背を向け合った二人は床に脱ぎ捨てられた服を着始めた。
最初のコメントを投稿しよう!