プロローグ

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 目を開くとそこにも、月。  あの時と何も変わらない無感情な月。  今日も僕になど何の興味もなさそうだ。そしてやはり月は僕を照らさない。  まるで僕は透明人間だ。  もしくは月の陰。光は当たらず闇へと溶ける。  確かに実態があり存在していながらもしかし存在して見えない。  認識されない。  記憶に残らない。  いないも同然。  お似合いだ。  それでいい。  構わない。  それが僕だ。  諦めた僕はもう多くの人に見てもらうことなんて望まない。透明人間には過ぎたものだ。スポットライトは僕を照らさないのだから。  だから望まない。  もう、求めない。  そう  それがたとえ  彼女のことであったとしても。
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