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「今日は来れる?」
電話口からは思った通りの人物の声が聞こえてきた。
落ち着いた少女の声。
挨拶も何もなしだ。そんなところはいつも通りであるため気にはしない。
「今日は来る?」
再び電話口から声が聞こえた。
こちらの予定を……ではなく、僕自身の意思を確認するような問いかけ。実際用事なんて何もないため、すべて僕の意思に委ねられる。そしてそれはすでに決まっている。
ただ、ここですんなり応えるのも面白くないので、僕はひとつ意味のない抵抗をしてみたくなった。
「まずは都合を訊くところなんじゃない?」
ほんの少し意地の悪そうな声を意識して含みをもたせた。自分のこういうところはつくずく面倒くさいと自分自身感じている。
「僕にだって用事があるかもしれないよ?」
ない用事を無意味に仄めかす捻くれ者の僕であったが、生憎そんな僕の面倒くささなど彼女は慣れたものだった。
「あるの?」
「……ないけどさ」
「じゃあ、いいじゃん」
抵抗終わり。
本当に何の意味もなかった。そもそも僕の予定をある程度ではあるが把握している相手には無駄なことだ。
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