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「夕飯はどうする?」
この後の予定は決まったものと判断したようで、彼女はそのまま話を進める。
「あー……食べてから行く。だから少し遅くなるかも」
「ウチで食べればいいのに」
「毎回そういう訳にもいかないでしょ。おばさんに悪いし」
「気にしなくていいのに。ママ喜ぶよ?」
「それでもだよ」
僕の方は気にするのだ。
その後少しだけ話し「じゃあ夕飯後に」と言って僕は通話を切った。
画面の消えたスマホを眺めながら僕はベッドに背中から倒れ込む。ベッドのスプリングが軋む。仰向けのまま見上げた先、開いた窓の向こうには見たくもない夜空。
あの日ほどではないもののそれでも多くの星が瞬いて見えた。そしてその中に一際大きく強い光を放つもの———月が浮かんでいる。
無感情なぼんやりとした光。
街の人工的なものとは違うその自然な光は闇に沈み込もうとする夜空を、流れる雲のシルエットを青白く照らし浮かび上がらせ、拡がっていく。夜空は透明感を増し、その高さ広さをより強く感じさせた。
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