サント・マルスと混沌の邪神ー ゴンドワシア編ー

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「ごめんなさい・・・それが・・・。」「何も考えてなかったのかよ。」 「あの場ではそう言うのが精一杯で・・・。」 サラディンが近づいてくる。 「王子、メセトハプラ軍が着々と砦に集まってきているようです。」 「そうか、やはり噂を本当だったんだな。」 「さて・・・あとはどうやってここを破壊するか・・・。」 皆考え込んでしまった。 「その役目。私が引き受けよう。」どこからともなく声がする。 「誰だ?。」 「あ・・・あなたは。確か『夢のお告げ』でロナウハイドに協力を 求めよと告げた・・・。」「夢のお告げ・・・?なんだそりゃ。」 「・・・よくわかりませんが・・・。そう言う夢を見たとしか・・・。」 「私の名はこの大陸の神、大陸神ゴンドワシア。そなたの枕元に立つ私の 話を信用して行動してくれたようで何より。メセトハプラとの衝突を 避ける為、私の力を貸そう。後悔はないな。」 「はい、ありがとうございます。お願いします。」ピラデルポス王子は 力強く答えた。  大陸神ゴンドワシアは祈りを込めた。するとダムの一部にひびが入り、 それが少しずつ大きくなった。かと思うと遂にダムは決壊し、大量の水が 洪水となって下流に流れていく。 「・・・怖ええ・・・。あんなのに巻き込まれたら一溜りもないぜ。」 「ペガソーサ。下流に向かって頂けますか?。」「分かった。」 ペガソーサが下流へ向かって飛ぶ。同時にサラディンも追いかけてくる。  サラディンが話し掛ける。 「このダムは先王アブドゥルが、毎年雨季の時期に起こるルイナ川の氾濫を 抑える為に建設したもの。いやはや、まさかこんな形で壊されるとは。」 「国民を守る為です。お爺様も分かって下さるでしょう。大目に見て 下さいよ。」 下流では、洪水に巻き込まれたメセトハプラ軍の兵士がなす術もなく 流されていく。 「可哀そうですが、これで当分はメセトハプラはギザフに侵攻してくる 事はないでしょう。」 「これで、ギザフだけでなく、デルシャへの侵攻も撤退してくれれば いいんだが。」 「そう巧くいけばいいが・・・。だが我々がこうしてる間にも着々と デルシャへの侵攻を開始していなければいいが。」  砦の真上まで来ると、川の流域は氾濫し、濁った水で溢れている。 「物凄い破壊力だ・・・。」皆改めてその脅威を感じた。  氾濫した川の水も昼頃までには引き、辺りには水が流れた跡がくっきりと 残っている。    ギザフの宮殿に向かいながらサラディンが話してくれた。 「ギザフは平和な国だった。そしてメセトハプラの先代の王ポンペイウスも 平和を好んでいた。ギザフとメセトハプラ。二つの国の懸け橋として ポンペイウスの娘はアブドゥル王の元へ嫁いできた。しかし、 ポンペイウスは謎の死を遂げ、王位後継者であった第一王子と第二王子が 相次いで亡くなり、側室の子であったメンティスが王位に就いた。 それからだ、メセトハプラが軍事に力を入れるようになったのは。やがて 軍事力を拡大したメセトハプラは周辺の小国を次々と滅ぼし、自国へ 吸収していった。そしてメンティスが次の目標として目を付けたのが このギザフの国だ。肥沃な大地と豊かな自然が育む実りを求め、 メンティスはこの国を自分のものにしようと企んだ。周囲の反対を 押し切り、ギザフの第一王位継承者であったアブドゥルの娘である王女 アルシノエを無理矢理五番目の妃にして、王子を産ませた。それが 王子ピラデルポス。」 「・・・確か、メンティスは女王の夫となったのをいい事に、ギザフの 法までも変えたって言ってたよな。」ユーリウスは答えた。
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