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「そうだ、『王位を継いだ者がまだ未成年だった場合、その父親が摂政と
して国の政全てを担う』と。今の状態で、女王アルシノエが死去、或いは
王位を退いた場合、当然のことながらピラデルポス王子が王位を継ぐ事に
なる。そして王子はまだ十三歳。王位を継いだところでも未成年者として
王政を振るう事はできない。そうなれば実質上メンティスが摂政として
この国の政権を振るう事になる。」
「奴の目的はそういう事だったんだな。」
「メンティスが塗り変えた法に逆らう事はできない。そう考えた元老院達は、
国政がメンティスの自由になるのを阻止する為、王子を殺害しようと
した。王子が亡くなれば女王は自ら次の王位後継者を指名できる。また、
王位後継者が居なくなったことを理由に新たな王位後継者を得ようとする
行為も、メンティスは認めざるを得ない。そしてその王位後継者が
メンティスと縁もない人物だとしたら、メンティスはこのギザフの国政に
口出しすることなど出来なくなる。しかし、女王にしてみれば父親が誰で
あれ、ピラデルポス王子は自らの身を痛めて産んだ大切な我が子。そして
大切な家族だ。幾ら元老院達の提案でも受け入れる事なんて出来なかった
はず。だから、危険を冒してまでメンティスを失脚させようとしたのだ。
ペガソーサの存在もその一つ。たった一体でも味方につけられれば軍事力と
して大きく役立つに違いないと考えての事だったのだろう。」
「・・・そういう事か。・・・ただ、あんなに頑なだったあんたが、何故
ここまで話す気になった?。」
「そなたの人柄を知ったから、とでも言おうか。『勇者ロナウハイド』に
協力を求めたい、女王陛下はそう言ってはいたが、噂話だけではどうも
胡散臭いと私は感じていたからな。だが、王子をあそこまで奮い立たせ、
結果的にはメセトハプラの侵攻を食い止めさせた。そこまでこの国を思い
やってくれたのだと思うと、自分の腹を割って話してみる価値はある人物
なの位だな、と。そして、『勇者』の肩書は単に力強さだけではなく、
その意気込みや強い意志によるものだとよく解った。」
「皆様にはすっかりお世話になってしまいました。私も、この国の王と
して国を守り国民の平和と幸せを願っていきます。勇者ロナウハイド。
そして仲間の皆さん、本当にありがとうございました。あなた方にはお礼の
言葉もない。そして来るべき日の為に私も祈りをささげましょう。では
お元気で。」
ピラデルポス王子はこう言って、ユーリウス達を見送った。
「よかったな。これであの国は安泰だ。なんでもまたダムを造り直す
とか。実は雨季の時には働けない連中が多いので困っていたが、ダム建設で
働いて貰う分、そいつらに賃金を払えるから失業対策にもなるんだと。」
ジルカメスがほっとしたように言う。
「それに、これで頭の固い元老院達も考え直してくれればいいがな。」
「そうだな。」「うん。」
「よし、今度こそクレア島にいるメセトハプラ軍の撤退を考えなきゃな。
今回の事で撤退してたら何も考えなくて済むんだが・・・。」
ユーリウスはペガソーサの宝玉を取り出して言った。すると
「・・・それなんだけど、聞いた話メセトハプラ軍はそんな事でびくとも
しないらしい。どんだけ大きな軍隊を持っているんだよって感じ?。」
ジルカメスが言った。「うっそおだろお。」「本当だとさ。」
「アレがきっかけで、クレア島にいるメセトハプラ軍にも何か影響が
あるんじゃないかって期待して頑張ったのに・・・。」
「え・・・、じゃあさ、メセトハプラ軍がクレア島にいなかったら
あそこまで頑張らなかったって訳?。」
「当たり前えだろ。新婚なんだからオルケルタと二人っきりでゆっくり
旅の間を過ごしたかったんだ。できれば面倒な事には巻き込まれたくは
なかったんだが・・・。あああ、それなのに・・・。」
「勇者サマがそんな事口に出すなよ・・・。。」
その時、突然空に大きな影が現れた。「な、何だ?。」
「大陸神ゴンドワシア!!。」
ゴンドワシアはゆっくりとユーリウス達の目の前に降りた。
「そう言えば・・・そのデルシャだが・・・。ユーラントの都市、
デルシャに侵攻する為クレア島に待機しているとか。」
「そうだが・・・。」
「実はクレア島の側にあるメルクーア島に近々大噴火が起きるようだ。
その話を大陸神ユーラントに伝え、メルクーアにいる住民を避難
させなければならない。」
「え・・・ほ、本当か!?。」
「地下遥か下に流れるマグマの流れが強くなっている。そしてその
エネルギー元がどうもメルクーアから流れているようなのだ。」
「・・・あっちゃー、次から次へと・・・もう勘弁してくれよ。・・・。」
「そんなこと言ってないで、気ィ取り直して、行くぞ!!。」
今度はジルカメスがユーリウスを小突いた。
「・・・その前に・・・。」「え・・・何だよ!!。」
ユーリウス達を大陸神ゴンドワシアが引き留めた。
「ユーラントの勇者ロナウハイドよ。これを渡しておこう。」
ゴンドワシアはユーリウスの手に金色に光る宝玉を手渡した。
「これは一体・・・?。」
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