サント・マルスと混沌の邪神ー ゴンドワシア編ー

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「これは、メセトハプラの太陽神ラーを誕生させた時にできた副産物。 いわば『臍の緒』のようなものだ。これが闇の力を封じるのに役に 立つとは言わんが、これだけでも強い光を放てる。微弱な力だが何かの 力にはなるかもしれん。持っていけ。」 「・・・そうなのか・・・。」ユーリウスは宝玉をじっと見つめ、顔を 上げた。 「それと、もう一つ。」ゴンドワシアは小さな黒い珠をユーリウスに 渡した。 「それをメルクーアの者に渡してくれ。私の伝言が入っている。大噴火が 起きる前に避難せよと。皆、助かればよいが。」 「分かった。」 「この世界が闇に包まれるか否かはそなたに掛かっている。私も力 ある限り祈りを捧げよう。それでは、達者でな。」  「ありがとう。」  ペガソーサに跨がり、急いでメルクーアを目指す。 「ペガソーサ、メルクーアに近づいたら低空飛行できないか?。」 ユーリウスは訊ねた。「どうした?。」 「・・・火山とやらの位置を確認したい。できるか?。」 「やってみよう。」 やがて、メルクーア島が見えて来た。心なしか幾つかある山から 上がっている噴煙の色が以前とは違う気がする。 「これが噴火の予兆ってやつか。」ユーリウスはじっと目を凝らす。 「そうなのか・・・詳しいんだな。」ジルカメスが感心する。 「いや、これはデルシャ神話で得た知識だ。デルシャの南にある都市が 嘗て火山の大噴火で全滅したという伝説めいた話があるんだ。その時の 状況がこんな感じだったかなって。」 「ならば急がねばならんな。」 ペガソーサはメルクーアの集落目指し、低空飛行を続けた。あまり低く 飛んでいるので集落の者が見つけ、報告に行ったようだ。 「・・・長老か?。だったら助かんるんだが、他の奴らは話が通じなくて 困る。」「確かに・・・。」 ユーリウスとジルカメスはそんな会話を交しながらペガソーサから降りた。 「・・・勇者ロナウハイド!!。英雄ジルカメス。そなた達がここを 訪れたという事は何か予兆があるのだな。」 「そうだ、急いで長老に会いたい。」「解った。」 集落の者が先に立って長老に取り次いでくれた。 「おおっと、今日は話が分かるのね。」 「だよな。そうでなけりゃブチ暴れても言う事を聞かせようと思って いたからな。」 「・・・おいおい、この集落を滅ぼす気かよ。・・・やりかねない よな。」  長老の屋敷に入ると、長老は難しい顔をして待っていた。 「よく来られた。勇者ロナウハイドよ。」 「なんだ、結局俺の正体知っていたんだな。」 「まあ、それはともかくとして、実は夢のお告げでな・・・。」 「また・・夢のお告げかよ・・・。」ユーリウスはちょっと力が抜けた。 「この島の中心にある火山『メルクーア』山が近々大噴火を起こすと 言われた。しかし、この地で大噴火が起きるといわれても、我々にはどう すべきかよいかわからない。そして、本当に噴火が起きるのか。確かに、 集落の者の話では噴煙の色が変わったとか、量が多くなったなど言われて いたが、それがいつ、どの時点で起きるのか全く見当もつかん。しかし、 大噴火が起きるとなると、この島の者たち全員を避難させ、被害を最小限に 食い止めねばならぬ。そして、それが可能なのか。助かることは できるのか。それを知る術はない。そこで何か少しでも情報を知る為、 ロナウハイド殿のお力をお借りしたい。」 「実は俺達もその為に来たんだが、まずはこいつを見てくれ。」 ユーリウスは大陸神ゴンドワシアの伝言が入った黒い珠を渡した。  黒い珠は宙に浮かび、光を放った。そしてホログラムのような立体映像が 現れた。 大陸神ゴンドワシアが映っている。 「メルクーアの住民たちよ。この地の地脈の動きが活発化している。そして それがメルクーアの地下深くからその波動が出ている為だと分かった。 メルクーアは元々火山島このままではメルクーアに噴火活動が起き、島全体を 一変させるかもしれぬ。その規模は恐らく島全体、いや、クレア島や ユーラントの南の一部にまで影響を及ぼすかもしれない。しかし、今の ところ、メルクーアに、島から出て他の場所、例えばユーラントなど安全な 場所に避難できる術はなかろう。そこで、大陸神ユーラントと海の女神 メルクーアから協力を得るしかない。そこで私はユーラントの勇者 ロナウハイドに大陸神ユーラントへの協力を依頼する事にした。命あるものを救うのが神の使命。滅びを黙って見ている事はしないだろう。後はよろしく 頼むぞ。」 黒い珠はそれだけを伝えるとさらさらと砂のように零れ、消えた。 「ユーラントと海の女神メルクーアからの協力か・・・。これで我等は 助かるのだろうか?。」 集落の若者が難しい顔をして考えている。 「大陸神ユーラントには俺が話をつける。だが、その海の女神メルクーアって 言うのにどう話をつけたらいいんだ?。その術はあるのか?。」 「いや、・・・全くない。」 「ちよ、ちょっと待てよ。この島の名はメルクーア島だろ。女神 メルクーアとは何か接点があるんじゃないのか?。」 「いや、残念ながら、我々の先祖がこの地に集落を築いた時に海の女神 メルクーアの名を付けただけだ。接点がある訳ではない。」 ユーリウスは頭を抱えた。「また八方塞かよ・・・。」
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