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「いや、そんな事で悩んでないで、まずは出来る事からやるしかねえ。
そうだろう。」
ジルカメスが宥める。ユーリウスも重い口調で「ああ。」とだけ返事をした。
早速ユーリウスは、外へ出て大陸神ユーラントとコンタクトを
取ろうとした。
「・・・今、俺達メルクーア島に来ているんだが・・・?。え、・・・何?。
よく聞こえない、ど、どうしたんだ?。何?。」
大陸神ユーラントと頭の中で会話するはずなのだが、話が通じない。
「どういう事だ?。」
ユーリウスは顔をしかめた。「どうした?。」ペガソーサが訊ねた。
「ユーラントとの話が出来ない。一体どうしたんだ?。まさか、ユーラントに
何か?。」
焦るユーリウス。ペガソーサは暫く考えている。
「ここがユーラント大陸ではないからではないか?。もしかしたらユーラント
大陸まで行けば会話ができるのではないか?。早速行ってみないか?。」
「そうか、とりあえず試してみよう。」
ユーリウスはいそいでペガソーサに跨った。ペガソーサも急いでくれた
お陰で、あっという間に大陸の南端に辿り着いた。
「大陸神ユーラント、聞こえるか?。」「戻って来たのか、どうだった?。」
今度はユーラントとの会話が順調にできている。
「アンテナが立っていない状態の端末型通信機かよ。」そう言いたいのを
あえて堪え、これまでの話を伝えた。
「海の女神メルクーアか、分かった。メルクーアには私が話をしてみる。後は
頼んだぞ。」「こちらこそ。」
それだけを言うと、ユーリウスはペガソーサに急いで跨り、メルクーア島に
戻った。
メルクーア島の集落の人々が皆集まっている。
「おお、ロナウハイド殿。戻られましたか。」「何か変った事でも?。」
「あれから噴火活動が活発になったようで、噴煙や湯気の上がる量が
見た目にも増えている。」
そう言われて、ユーリウスも山の方を見た。「・・・確かに・・・。」
その時、遠くの方が地響きが聞こえた。「いよいよ、なのか!!。」
「噴火が始まるというのか?。」「・・・こんなに早く・・・そんな。」
誰もが不安な声を上げる。しかし、山を見れば特に変わった様子はない。
「噴火・・・じゃないのか?。」
すると海の方から巨大な水の柱が上がった。そしてその柱は少しずつ人の
ような形に変化していく。
「・・・私はこの海の女神メルクーア。私を求めているのはあなた方ですね。
そしてそこにいるのは勇者ロナウハイド。あなたの願い、叶えましょう。」
「本当か!!。」
「ええ、ですが、この島に住む住民全てを助けるのは私の力だけでは
ありません。皆が一つになって初めて成し遂げられる。いいですね。」
「え、一体それはどういう事だ?。」
「私がこの島から、ユーラント大陸まで道を造ります。その道は今夜満月の
夜の間だけ。その間にユーラント大陸を目指して避難して下さい。
いいいですね。」
「今夜か・・・。」
そう言うと、海の女神メルクーアは海へと消えた。
やがて、夜を迎えた。荷物を纏め、避難の準備ができた住民達は
メルクーアの出現を待つ。海の水が割れ、メルクーアが姿を現した。
「皆さん、準備は宜しいですね。」
メルクーアは辺りを確認し、そして祈りを捧げた。
水は辺りに轟音を響かせながらまるで嵐の時のように荒れ狂う。と同時に
ある一定方向に向かって谷間が出来ていく。やがて海は割れ、大陸へ向かって
道が出来ていた。
「・・・凄い・・・これが神の力か・・・。」
「ぐずぐずしてはおられん。急いで大陸へ向かうのだ。」
集落の住民達は大移動を開始した。
「私も協力しよう。」
ペガソーサも子供や女性などを大陸へ運ぶ。
「・・・急げ!!。早くしないと夜が明けるぞ。」
ユーリウス達も手伝い、夜のうちに皆をユーラント大陸へ上陸させるのに
成功した。
島民全員を避難させたのを確認し、ユーリウスは頭の中に話し掛けた。
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