サント・マルスと混沌の邪神ー ゴンドワシア編ー

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「分かった。今から始める。但し一度には無理だ。何度かに分けて転送する。 そう伝えてくれ。」 「了解した。後は頼むぞ。」 ユーリウスはユーラントの言葉を伝えた。島民達は少しずつ転送魔法に よってその場から消えてゆく。 「そういえばさ、クレア島にはメセトハプラ軍が待機していたはず。あれは どうなるのかな。」ジルカメスが訊ねた。 「流石にクレア島にいるメセトハプラ軍の軍隊までは手が回らないだろう。 だが、この火山活動がメセトハプラ軍にも影響を与え、撤退する要因になって くれればいいが。」 「そううまくいくかな。」ジルカメスは腕組みをする。 「いや、そうとも限らないだろう。」そう言ったのはペガソーサ。 「これは俺の仮説なんだが・・・。」ユーリウスは前置きを置いて 話し出した。 「この火山活動は惑星エーアデの意志。火山の噴火でクレア島にいる メセトハプラ軍を撤退させ、戦意喪失を図るのが目的。戦争が起きなければ エーアデも自らの計画を遂行しやすいだろう。」 「そういう事だな・・・。」ペガソーサが頷く。「そうなの?。」 「いや、なんとなくそう思っただけ。」「そうか・・・。」 「いえ、その通りです。母なる星、惑星エーアデは自らの力を高める為、 争い事を全て排除しようとしています。勇者ロナウハイド。あなたはその為に 誕生した人物。惑星エーアデの手足となり、この星を闇から救って頂きたい。 惑星エーアデはそう願っています。」 女神メルクーアはユーリウスにそう伝えた。 「さあ、私が出来るのはここまで。あとは大陸神ユーラントのお力にお任せ しましょう。」 そう告げると海の中へ消えて行った。  「・・・大陸神ユーラントの力か・・・。ところで・・・メルクーアの 人達は何処へ転送されたんだ?。」 「安全なところだとは思うが。けどこうしてメルクーアの人達は助かって いるんだからそれはそれでいいんじゃないのか?。」 「まあ、そうだが。・・・。」 ユーリウスは少し腑に落ちないものを感じたが、結果は皆助かったから よかった、そう思う事にした。  夜が明けてくる。まぶしい光が差しているはずの空は噴煙に覆われ、未だに 暗闇が続く。 「始まったか・・・。」 ジルカメスが呟く。同時に大地の震動が伝わる。 「大地の鼓動が伝わる・・・。」 いつの間にか、大陸神ユーラントが側に来ていた。 「さあ、ここも危険だ。転送を開始するぞ!!。」 返事をする間もなく、ユーリウス達は転送魔法によって移動した。 「ここは・・・?。」 なんとなく見覚えのある景色だ。「あれえーっ・・・。」「どうした?。」 「ここ・・・俺達が住んでる集落の近くだ。」 誰か一人、こちらへ向かってくる。「・・・?。親父か?。」 「ユーリウス、やはりそうか。・・・ジルカメスも一緒か。」 「ご無沙汰してるぜ。ゲルマンさんよ。」 「そうか、・・・お前達もよく無事で。」「ああ。」 「実は、メルクーアで火山活動が始まって・・・。」 「その話なら大陸神から聞いている。私も北の方へ行っていて、慌てて 戻ってきたところだ。」「北?。」「後で話す。」 「ところで、メルクーアの人達はこっちに来ているのか?。」 「ああ、全員無事だ。」「そうか、よかった。」 「おお、ロナウハイド殿!!。・・・もしかして、ゲルマン殿もご一緒か。」 声のする方を振り向くと、そこにはメルクーアの長老が居た。 「よかった。みんな無事だそうだな。」 長老が近づいてくると、ゲルマンは何故かユーリウスの陰に隠れるように 立った。「・・・何やってるんだよ。」 ユーリウスは小声で訊ねる。 「実はな・・・あの長老はちょっと苦手でな・・・。」 「はあ?。何でだよ。」 するとゲルマンは口元に手を当て、ユーリウスの耳元に話し掛けた。 「実はその昔、メルクーアの集落から花嫁を紹介しようと言われたんだが、 その頃の私は女性に興味がなくてな。断って以来、どうも気まずいんだ。」 「それって・・・いつの話だよ。」 「二十数年前、お前の母さんと知り合う前だ。」 「・・・じゃあ、時効じゃね?。」「そうだがな・・・。」 「なんとお礼を述べたらいいか、お陰で皆助けることが出来ました。」 「いや、俺達はゴンドワシアの伝言を伝え、あとはユーラントに協力を求めた だけだ。大した事はしていない。」 「いや、我々が助かったのは事実だ。」 長老の側近が答えた。そこへ大陸神ユーラントが現れた。 「戻って来たのか・・・。で、どうだった?。メルクーアとクレア島は?。」
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