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「俺が思うに、惑星エーアデはジルカメスに何か成し遂げさせようと
しているんじゃないかと。それはこれから復活する邪神ヴァルタヴルカン
との戦いなのか、或いはまた別の運命なのかは分からないが。」
「・・・俺は・・・。」
「逆らえない運命ならば、俺は惑星エーアデが定めた運命の中で精一杯
生き抜いてみせる。これが、今の俺の答えだ。自分らしく、そして後悔
しないようにな。」
間もなく、足元に響いていた大地の震動が少しずつ小さくなりはじめて
来た。
「噴火活動が終結するのか?。」「いや、分からん。」
するとペガソーサが宝玉の中から現れた。
「今なら大丈夫かもしれん。様子を見たいんだろう。」
その答えを聞いたユーリウス達は早速ペガソーサに跨り、メルクーア島
上空を目指した。
どこからともなく美しい声がする。
「大地の震動は小さくなっていきます。島は間もなく元に戻るでしょう。」
女神メルクーアだ。「そうか、よかった。」
それだけ聞いてユーリウスは安心した。「よし、今度はクレア島だ。」
上空からクレア島を眺める。島全体が火山灰に覆われ、木も草も見えない。
逃げ遅れたメセトハプラの兵士達は殆どが虫の息だ。中には助けを求めて
いる者もいる。
「生きている者は助けてやりたいが、どうする?。」
「助けるのかよ!!。敵軍だぞ?。」
「・・・そんなの、俺には関係ないよ。」
「・・・やっぱりね。言うと思った。」
ジルカメスは両手を上に向けた。
とは言え、逃げ遅れた兵士は僅かしかいなかった。
「けど、よくここが危険だって分かって早く避難したよな。・・・しかし、
一体誰が避難指示を出したんだろう。」
「ああ、俺も今それを疑問に思っていたトコだ。」
ユーリウスは少し考えた。
「この事は、俺達が知る必要はないのかもしれない。」
「えっ・・ええ、ど、どういう事だよ?。」
「その真相は知らなくてもいいんじゃないか?。それよりも俺達が今
やらなければならないのは逃げ遅れた兵士をメセトハプラに帰す
だけだ。」
「もしかして・・・。」と、ジルカメスは少し考え、訊ねる。
「おいおい、また『惑星エーアデの意志』とか言うんじゃない
だろうな。」
「いや、その通りだ。惑星エーアデは自らの生命力を上げる為、惑星上の
生命の命を絶つような真似はしないと思う。今の時点で、メセトハプラ軍の
侵攻でデルシャが大きな犠牲を払う事はしたくない。かといって、
メセトハプラ軍が全滅する事も避けたい。と、なれば今言った事の流れには
辻褄が合う。」
「ま、まてよ。あんたは何もかも惑星エーアデの意志にしてしまって
ないか?。他の可能性だって・・・。」
「他の可能性・・・?。例えば、どんな?。」
「大陸神クラスの神の力とか、或いは、メセトハプラにいた占星術師とか。」
「それはない。こんな大それた事、人間には無理だ。それに大陸神は基本的
には自分の大陸から出ることはできない。そしてクレア島はユーラントに
近いが、ユーラントの島ではない。かといってゴンドワシアの島でもない。
つまり、クレア島には大陸神ユーラントも大陸神ゴンドワシアも立ち
入れない場所。この地に駐留していたメセトハプラ軍を避難させることは
できない。女神メルクーアも自分の力を作用できるのは海だけ。となると
答えは一つだ。それにユーラントがクレア島に来られるのであればとっくに
メセトハプラ軍を追い払っているだろう。」
「この世界に住む生命全ては、所詮惑星エーアデの掌の上にいるって
事かよ。」
「ああ、そして人の感情さえもコントロールできるはずの惑星エーアデが
唯一恐れているのが、闇の神、邪神ヴァルタヴルカン。」
「闇の神か・・・。どんだけ恐ろしい力を持つんだ・・・。」
ジルカメスは未知の巨大な力に身震いした。
僅かに生き残ったメセトハプラ兵士をメセトハプラに送り届けるのには
苦労はなかった。この人数であればペガソーサが何度か往復するだけで事は
足りるとその役を買って出てくれたからだ。それだけでなく、その役目を
終えるとユーリウス達をゲルマンが待つ集落まで送り届けてくれた。集落の
外では避難してきたメルクーアの人々が野営の準備をしている。
「・・・ユーリウス!!。戻ったか。」
ゲルマンがユーリウスを見つけ、やって来た。「ご苦労だったな。」
ユーリウスはメルクーアとクレア島の様子を父親に伝えた。
「そうか、それはよかった。メルクーアの人々もこれで安心だ。それは
そうと、今日は一旦家に戻らないか?。母さんや皆が心配している。
ジルカメス達も今日はここへ泊って行くといい。」
「そうか、じゃ、お言葉に甘えて。」
ゲルマンの好意でジルカメスとフンヴォンは長老の幕舎で、イシュナルは
ゲルマンの幕舎に宿をとることになった。
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