サント・マルスと混沌の邪神ー ゴンドワシア編ー

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 着いた場所はデルシャのオリエンタポリス神殿だ。デルシャの守護神セルデゥスとデルシャの最高責任者である教皇が出迎える。 「おお。大陸神ユーラント、それに勇者ロナウハイド。待っていたぞ。」 「一体何があった?。」「実は・・・。」 教皇の話はこうだった。  ユーラント大陸のある場所から南。イズラマ海の向こう側にあるゴンド ワシア大陸にある国メセトハプラ王国が、このデルシャに向かって侵攻中だという。 「今はなんとかクレア島で抑え付けてはいるものの、何時それが破られ こちらに攻め入ってこられるか・・・。」  「メセト・・・ハプラ?。」 ユーリウスはエーアデ儀で位置を確かめようとした。「こちらの方が早い。」 教皇はそう言って地図を広げた。 「いいか、勇者殿。ここが我々の国デルシャ。そしてこの真南にある海が イズラマ海、メセトハプラはイズラマ海を挟んですぐ南側の、このゴンド ワシア大陸にある国だ。そして、・・・。」 教皇は指先を滑らせ、ユーラント大陸のすぐ南側を差した。 「そしてここにあるのがクレア島。今はここでメセトハプラ軍を押さえつけているのだが・・・。」 「ク、クレ・・・すぐそこじゃないか・・・。」 「それだけではない。メセトハプラは歴史も古く、人口も多い。つまり、 それを束ねる王の力と守護神の力量は我が国より優れているだろう。」 「戦える術は無いのか?。」 「難しいな。力量のある者がいればよいが、建国以来長きに渡って平和を 維持してきて戦う事が無縁となった今のデルシャには太刀打ちできる力は ないかもしれぬ。 建国の勇者オリエンタポリスとてもうこの世の者ではない。そのオリエンタ ポリスの力を使えばこの国を守る事だけでも出来るかのしれない のだが・・・。」 「勇者オリエンタポリスか・・・。」  その夜、ユーリウスはデルシャの神殿に泊まる事となった。勿論 オルケルタも一緒だ。 その身に流れる血のせいなのか、エイジャン中を振り回されていた時よりも 空気が心地いい。オルケルタは疲れが出たのか、寝台に横になるとすうすうと寝息をたてた。「無理させちまったかな・・・。」 ユーリウスはその寝顔の可愛さのあまり、唇にキスをしようとした。「あ・・・。」 唇同士が触れ合う瞬間、オルケルタは目を覚ました。オルケルタは恥ずかしいのか掛け布で顔を半分覆った。「・・・ごめん、こんな時に・・・。」 「あ・・・いえ。」 二人の間に少し沈黙が流れた。 「・・・そう言えば、暫く・・・『御無沙汰』でしたね。」 「そうだよなあ。それどころじゃなかったもんな。」 ユーリウスは色々思うところはあるものの、少し頭の中を落ち着かせたいと思った。  そう考え、オルケルタを抱き締めた。「ロナウハイド様!?。」 興奮が高まってくる。二人は口付けを交わした。「シていい?。」 オルケルタは頷く。 そしてユーリウスはオルケルタの胸元に少しずつ手を入れていく。 「あ・・・ん。」 二人はそのまま寝台に沈み込んだ。 「今・・・何か音が・・・?。」「え、あ・・・そういえば。」 余韻に浸っていた二人の耳に何かの音が聞こえた。汗の引いた身体の上に服を着て、改めて耳を澄ませた。 「何か聞こえるよな。」「ええ、でも何かしら。」 オイルランプの明かりを持って、二人は寝台を後にした。部屋を出て、耳を 澄ます。 「こっちだよ。」その声に二人は顔を見合わせた。 「いま、はっきり聞こえたよな。」「ええ、確かに。」 「こっちこっち・・・。」 二人は声に従って歩く。神殿内は静まりかえっていて、少し不気味な位だ。 そして二人がたどり着いたのは、広々としたとした空間だ。 「ここは一体・・・?。」 「連れて来たよ。」「精霊アラトゥーザ。ご苦労だった」 「精霊・・・?。」 「よく来てくれた。勇者ロナウハイドよ。」 頭の中に声がする。すると目の前にぼうっと何かが浮かび上がってきた。 「・・・亡霊・・・?。」 ユーリウスは少し驚いたが、オルケルタの手前、怖がってもいられない。 「私の名はオリエンタポリス。」 「オリエンタポリス・・・この神殿の主か。」「そうだ。」 「この大陸に南にある国、メセトハプラについては聞いているな。」 「ああ、このデルシャを攻めてくるって話だな。」 「その通りだ。そしてその軍事力はこの国をも凌ぐほどの力を持っている。 真向より対決すれば我が国には勝ち目はない。」 「今は争っている場合じゃないのに・・・。」 「そうだ、なんとかしてメセトハプラを押さえ込みたい。メセトハプラの 守護神である太陽神ラーを押さえつければなんとかなるかもしれん。」 「太陽神・・・ラー・・・?。」「そうだ。」 「その・・・太陽神ってのに訴えられればいいんだろうけど・・・。」 「そうしたいのはやまやまだが、どうやってそれを成し遂げるか。それが 分かれば教皇もセルデゥスも悩まずに済むのだが・・・。」 ユーリウスは少し考えた。
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