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ピグ太を拾い腕に抱え着地した地点を見渡すとここは校舎と校舎の間にある中庭のようだ。近くに渡り廊下がある。
「ここだと行き来する生徒が多いから人通りの少ないとこに移動しよう」
そう言った矢先、
「キューピッド!?」
突然の声に振り向くとそこには一番見られたくない人の姿。
黒髪に柔らかな眼差しが清廉さを感じさせる憧れの彼。
錦先輩。
なんで先輩が私たちを発見するの!
固まる私にピグ太があぁ例の男か、と一言。
「その姿、愛のキューピッドに決まってる!」
目を輝かせこちらに近づいてくる先輩。
うわーこんなコスプレ姿恥ずかしいから見ないでくれ勘弁VS憧れの人から私に歩み寄ってくれるなんて幸せ! 対決の結果後者が勝利。
「いかにも。私が人々の縁を結ぶ愛の使者・キューピッドですっ」
ぶりっ子ポーズで答えてしまう。
「やっぱり!」
「そうですぅ。この子がマスコットのピグ太です」
隣で嘔吐くマスコットの首根っこを掴み可愛く両腕で抱える。
「イケメンさんはなにか恋でお悩みですか?」
「ああ。ぜひキューピッドさんたちに僕の恋を叶えてほしくて」
先輩が私を見つめ手を握る。
「僕と彼女との恋を叶えてほしい」
(え、先輩好きな人いるの!?)
ガガーンとショック。
「僕は中学の頃から好きな女性がいて、卒業式で彼女に告白しようと思ったのに尻込みしてしまって。彼女と高校が同じになった今こそ告白したいんだ」
「へえ……中学から片想い」
あれ。
それって当時の私と同じじゃない。
先輩も私と一緒の状況だったってことは。
もしかして、
(先輩の想い人って私?)
「きゃーどうしよ! 相思相愛両想いじゃない!」
嬉しさに身悶える私。
「もちろん協力します。その恋、私がズキューンと叶えちゃいますっ!」
「良かった。これで生徒会長との恋が叶う!」
「せ、生徒会長?」
「うん。生徒会長の紅手鞠さん。美人で文武両道で僕の憧れの女性なんだ」
口から抜け出た魂をピグ太が再び口にねじ込んだ。
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