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「紅手鞠さんって言われても生徒会長の顔知らないっての。私今日入学したばかりだしガルル」
「お前やさぐれすぎ」
先輩との話はこう。
『今日彼女に告白するために放課後校舎の中庭に来るよう手紙を書いておいたんだ。キューピッドさんたちには僕の告白が上手くいくようサポートしてほしい』
「なんで好きな人の恋を応援しなきゃいけないのよ」
中庭の木の上で貧乏揺すりをする。
教室の窓から生徒たちが私とピグ太を凝視していた。教師陣から度々あんたら何者!? と聞かれたがこちらもその都度「入学祝いで呼ばれた今話題のコスプレイヤーで~す」と笑顔でウィンクし追跡を免れた。
そして不機嫌な顔に戻り木の上で貧乏揺すり。
「本当なら私もここで入学式を迎えてたはずなのに」
事故にあって死にかけてそのうえ失恋なんて。
「とほほ」
落ち込む私にピグ太が呟く。
「『その恋、私がズキューンと叶えちゃいますっ!』だっけ? ノリノリだったのに可哀想にぶひひ」
広い空間があったので横の子豚をボウリングの投球フォームで投げる。
「この乱暴女ー!」
勢いよく空中回転する子豚は止まることなく宙を飛び正面の壁にぶつかりそうになる。
その時、ぽすっとピグ太の身体が柔らかくキャッチされた。
彼を受け止めたのは美しい女子生徒だった。
「大丈夫?」
「ぶ、ぶひ」
周りに花が咲き誇るような麗しい命の恩人に全身を真っ赤に染めるピグ太。
「そう、よかった」
微笑む眼差しはまるで女神のよう。ピグ太はうっとり女子生徒を見ている。
「じゃあね。子豚さん」
頭を撫でそっと地面に下ろすと微笑みを浮かべ彼女は去っていった。
去り行く命の恩人を見つめ一言。
「なんて可憐な人なんだ」
「よかったね美人に拾ってもらって」
彼を危機に追いやった犯人(私)が声をかける。
「俺、豚として飼われる生活も悪くないかも」
「あの人に限らずペットに豚飼おうとは思わないな」
「いっそ豚肉として食われたい」
「おい」
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