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放課後になりやっと待機状態から解放される。
「ところでサポートってどうするの」
「中庭に来た男と片想いの相手に向かってこの矢を射つ」
ピグ太は自分の尻尾をブチっと切る。切られた尻尾はハートの矢になった。
「矢が刺さった者同士はお互い両想いになりカップル成立。そうすれば任務成功で俺たちも無事生還」
千切れた尻尾は一瞬で新しいものに生え変わる。
「つまりこれで先輩たちを射てばいいのね」
「出来るかお前」
「私中学は弓道部よ。最初は下手だったけど今は達人級。それこそ錦先輩のおかげでね」
「そうかあの男も弓道部か。同じ中学で同じ部活かよ」
「終わった恋の話はやめやめ……あ」
先輩が中庭に来た。
油の切れたブリキのおもちゃのような歩き方だ。
少しすると中庭にもう一人歩いてきた。
「話ってなに。佐島くん」
「あの人って」
姿を現したのはピグ太をキャッチした女子生徒だった。あの人が紅手鞠さんか。
「ガーンッ」
ショックを受ける子豚の頭を撫で標的を見据える。
(もう少し会長に近づいて、あ、もうちょい右!)
なかなか狙いが定まらない。
「あ、あの、手鞠さん」
先輩はもじもじした挙げ句「やっぱ無理ー!」と中庭から逃げ出した。
「せ、イケメンさん!?」
「追うぞ」
先輩は屋上で膝を抱え落ち込んでいた。
「やっぱ僕じゃ彼女とつり合わないよ」
「なに言ってるんです。もう一度頑張りましょっ。今度は私も早く射つよう頑張るので」
中庭に目をやると生徒会長はまだその場にいる。
「ほら、会長待っててくれてるし戻りましょう」
「無理だよ」
「無理じゃないです。勇気を持って、ね」
しかし佐藤先輩は私の言葉に首を振った。
「僕にはもう資格がない。好きな人を前に逃げ出す出来損ないの僕に彼女を好きになる資格はない」
その言葉に私の胸に痛みが走る。
どうして。
なんで貴方がそんなこと言うの。
「先輩が私にそれを言うんですかっ!?」
私は彼の胸ぐらを掴み叫ぶように言う。
「先輩が“あの時”私に勇気をくれたんじゃないですか!」
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