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散々飛んだ挙げ句先輩が着地したのは中庭だった。なんて遠回り。
「ぐえ」
矢が消え先輩はサーフボードのように床を滑り着地。
「佐藤くん?」
「あの」
匍匐前進の姿勢で会長と対面する彼の顔は緊張を通り越して真顔。
「先輩がんばれ」
空から小声で先輩を応援。
「や、やぁ手鞠さん」
死にかけの虫のような動きで挨拶する先輩。
「……ぷ」
彼を見て会長はクールビューティーな印象を覆すほど豪快に笑う。
「あはははっ! 佐島くん、君、面白すぎ」
「へ?」
「全部屋上から丸聞こえだよ君の声。なにあの飛行! あはは!」
腹を抱え「苦しー」と笑い転げる彼女に先輩は口をあんぐり。
「て、手鞠さん?」
「そうだよ私笑い上戸なの。性格もワイルドだし。君の思ってるような私じゃなくて幻滅した?」
「そんなことない! 豪快に笑う手鞠さんも素敵だ。むしろ意外な一面が見れて嬉しい」
「私も同じ」
会長は言う。
「どんな佐島くんだって私は好き。中学の時から。だから資格なんてくだらないこと言わないの」
会長は彼のおでこに優しくデコピンした。
「手鞠さん、僕は、僕は! 貴方が好きだーッ!」
某韓流スターのような台詞を叫ぶ先輩だった。
「カップル成立ね」
「なんだ最初から両想いだったんじゃねーか。俺らの意味って」
「後押しくらいは出来たでしょ」
嬉しそうに笑う彼に「先輩よかったね」と呟いた。
『任務成功おめでとう!』
神の声だ。
『約束通り君たちを生還させてやろう。今度は死なないように気をつけるんだぞ~い』
ぞ~い、が言い終わる頃には私たちの身体は光りだしていた。
足元から身体が光の粒子になって消えていく。
「ちょ、足消えてる」
「落ち着け。この身体は仮の姿だから本来あった身体が現世で目を覚ますんだろ」
そう言うピグ太の身体も消えかけてる。
「元気でな倉本実桜。お前のことわりと嫌いじゃなかったぞ」
「ピグ太……もう会えないの?」
「しみったれんな」
つぶらな黒い瞳が私を見つめる。
「この世界で俺もお前も生きてることに違いはねぇ。それで充分だ」
じゃあな。
そう言い残しピグ太は空から消え去った。
「ピグ太!」
充分じゃないよ。
まだあんたの“本当”の名前を聞いてない!
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