目覚め

4/4
前へ
/168ページ
次へ
 よく見ると、〈足〉以外にも変化はあった。シオンの身体は、首の下から〈足〉の上半分にかけてひらひらとした白い布で包まれており、布には緋色の海星のような模様があしらわれている。シオンはその布に触れてみた。 (すごく、柔らかい……。人間は、こんなものを身につけて暮らしているんだ……)  シオンの周りには、他にも布がたくさんあった。シオンが横たわっていた大きな木の台にも、身体の上にかけられていた薄い物にも、とても手触りのよい布が使われていた。  シオンは布の感触を何度も確かめながら、改めて身の周りを見回してみた。布以外にも、そこには見たことのないものがたくさんあった。何段にも重なった箱の一つ一つに持ち手がつけられ、中に何かをしまえそうな大きな箱。四本の棒で支えられた丸い木の台と、その周りにある腰掛けられそうな小さな木の台。自分の姿が映っているきらきらとした板。何もかも初めて見るものばかりだ。 (これが……人間の住む世界……)  シオンはうっとりとしてその光景に見入った。母から聞いた話では、人間は自らの手で様々な美しいものを作り、それに囲まれて暮らしているとのことだった。実際、シオンの周りに置かれた様々なものも、それは繊細で美しい装飾が施されたものばかりだった。かねてから憧れていた世界が今や目の前に広がっており、シオンは喜びが湧き上がるのを抑えられなかった。
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加