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後編
「………えっ? まっ……ちょっ……」
俺の太ももに雅は硬いものを擦り付けてきた。
こんなところで、死角になっているとはいえ、誰が近づいてくるか分からない。
雅の胸を押して、大きな声は出せないので、ダメだと首を振って目で訴えた。
すると雅はちょっと待ってくださいと言って、俺を置いて離れて行ってしまった。
ぼーっとしてしまったが、俺は慌ててシャツを合わせてボタンを留めた。
「電車で帰るって言ったら、部長から許可でました。自由解散でいいそうです。行きましょう」
「行くって……どこに……?」
「俺のマンションです。ここからタクシーで10分の距離です」
少し古めかしい内装の店内で、たくさんの花達の誰よりも雅は美しく妖しい顔で微笑んだ。
「荷物はそこに。シャワー浴びてください。タオルはそこにあるんで……」
「ああ、すまない」
行くべきか悩んだ。
やっぱり俺は帰ると行ってマンションの前で雅を残して行こうとした。
しかし、足はマンションの中へ進んでしまった。
先日、雅を好きにしてしまった懺悔の気持ちもあって言う通りにするしかない。
そう思うのだが、それとは別にこんな状況に胸が高鳴ってしまった。こんな自分の気持ちなど無視しようと思うのに、その思いが俺の背中を押していた。
雅に誘導されるがまま、裸になって浴室に入った俺は、いったい何をしているのか分からなくなってきてしまった。
マンションに着いた時から俺は、口が空いたまま塞がらなかった。
雅は俺の後輩で、給与は俺よりもらっていないはずなのに、駅直結のバカでかい高層マンションに住んでいたのだ。
しかも単身者用の造りではない、ファミリータイプ向けの部屋で、玄関を開けると何部屋もあって驚いた。
本当に一人で住んでいるのかと何度も聞いてしまったが、雅は広い方が好きなんですと言って笑っていた。
……いや、俺でもって言うか、多くがそうだろう。
住めるか我慢するかの違いだ。
雅は住める方の人間らしいが、ただのアイドル王子ではなく副業でもしているのか、ますます謎が深まった。
頭にシャンプーを載せてゴシゴシ擦っていたら、カチャっとドアが開けられる音がした。
何か言い忘れたことでもあるのかと思ったら、背後に気配を感じた。
「なんだ? 雅か? 今目が開けられないから……」
「大森さん」
背後からぎゅっと抱きしめられる感覚がした。
しかも服ではない、生身の肌の感触がしたので、泡だらけだが慌てて振り返って見ると、素っ裸の雅が俺に抱きついていた。
「なっ………なっ、雅……嘘だろ………」
「大森さん、仲良くしましょう。分かったって言ってくれたじゃないですか」
「言ったには……言ったが……だっ……これは……」
「焦らさないで、もう、ギンギンなんです」
「はっ……みやっ……ううっイタッ」
泡だらけで目を開けていたので垂れてきたシャンプーが目に入って痛みを感じた。
目を擦っていたら、雅がシャワーをあてて髪に残ったシャンプーを流してくれた。
やっと目が開けられるようになったと思ったら、今度は雅の顔がすぐ近くにあって、言葉を発する間もなく唇が重なってきた。
「んんっ……! んっ……くっ………っっ……んっ」
広い浴室の壁に押し付けられて、こじ開けられたところから舌がねじ込んできた。
反射的に舌で押し返そうとしたが、その舌を絡みとられて根本から吸われるように舐められたら、甘い痺れを感じた。
「はっ………んっ………ハァ………ンンっ………クッ」
息つく暇もない激しいキス。
今まで付き合ってきた女性の誰とも、こんなに淫らでトロけるようなキスをしたことがない。
今まで俺がしていたのは、おままごとだったんじゃないかと思うくらい、欲望を根こそぎ駆り立てられる野獣になったかのようなキスだ。
どれくらい経ったのか分からない。
シャワーを浴びながらの酸欠になりそうなキスで、頭はぼーっと霞んで訳が分からなくなっていた。
ただ、体はものすごく熱くて溶けそうだった。
「大森さん、キスはあんまり上手くないね」
「っ……っ………」
「ふふっ、いいよ。その方がいい。ベッドに行きましょう。お互いもう限界みたいだし」
雅の言葉にぼんやりとしていたが、押し付けられた下半身に熱い昂りを感じた。
「あぁ………っっ」
俺のも雅のモノも、石のようにガチガチに硬くなっていて、雅は腰を使いながら卑猥に擦り合わせてきた。
そういえば、あのホテルの夜以来、自慰もしていなかった。
溜まりに溜まっていた状態でそんなことをされたらたまらなかった。
兜を合わせるようにねっとりと擦られたら、先端からトロリと先走りが溢れてしまった。
「あれっ、大森さん、溜まってるみたいですね。ここで一回抜いちゃいましょうか」
「うっ……あっ……ちょっ……ああっ」
クスッと笑った雅は自分のモノと一緒に掴んで擦り始めた。
卑猥すぎる光景と、強い刺激に身を震わせた。
自分でするのとは全然違う快感。
女の子とのセックスでは、男がやらなければ、満足させなければという思いで、気ばかり焦って萎えてしまうことがほとんどだった。
そんな俺の欲望は見たこともないくらい、腹につきそうに勃ち上がって今にも爆ぜてしまいそうだった。
「ハァハ……ァ、……だっ……むり……がまん……きな……」
「大森さん、イッていいですよ。可愛い声を出してイッてください」
「……ぅぅ……ぁ……くっあっ……でる……でっ……クッッ!!」
雅の手に巧みに擦られて、ぴゅうっと白濁が勢いよく飛び散った。
浴室の壁に飛んだがすぐにシャワーがかかって床に落ちて流れていった。
「ぁぁ………みやび……」
「たくさん出ましたね。じゃあ次は……俺を気持ち良くさせてくださいね」
イった後の気だるい状態でさっと体を拭かれて寝室に連れて行かれた。
手を引かれて廊下を歩いている時に、だんだん現実が見えてきて緊張してきてしまった。
これから……雅の中に………
あの夜のことはさっぱり覚えていない。
しかしこんな状態でここに連れてきてたということは、雅がそれを望んでいるのは間違いないだろう。
女性との噂しか聞いたことがない。
カモフラージュだったのか、それとも、あの夜のせいで、つまり俺がソッチに目覚めさせてしまったのか。
俺だって男と経験がないのに、雅を抱いてしまったなんて信じられない。
ここはハッキリさせないといけない。
寝室も広いし、雅のベッドはこれまた高級そうなキングサイズだった。
先にドカンとベッドに乗った雅に手を引かれて、俺もその横に倒れ込むように乗った。
すぐに俺に触れてきて、キスをしようとしてきた雅をなんとか止めて俺は口を開いた。
「ちょ……ちょっと待ってくれ。あの夜のことをハッキリさせておきたくて、俺達は最後まで……したのか?」
キスを手で止められた雅は、ムッとした顔で口を尖らせた。
「してないですよ」
「してないのか!?」
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