千郷と会う

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「あのね、実は、カラオケで変なこと言ってから、クラスの女子から無視というか、仲間外れにされてて」  最初から正直に言えば良かった。変な見栄をはったり、強がりをしないで。 「それって中心になってるの誰?」  そんな風に聞き返されるとは思ってなくて、慌てて答えようとしたら、先に千郷から答えを言われた。 「もしかして、斉藤(さいとう)さんと山田(やまだ)さんたちじゃない? 仕切り屋っていうか、いつも言い出しっぺ」 「よくわかったね」 「そりゃね」  千郷も中学3年間は一緒だったから、私以上に同級生のことは知り尽くしているのかもしれない。 「私、彼女たちと揉めたことあるもん」 「え?」  千郷が言い出して驚いた。 「2年の時、愛唯は別のクラスだったでしょ。あの2人に意見言ったら、突っかかってきたの」  そんな話全く知らなかったので、びっくりした。今は3人に増えてるけど、おおむね同じような感じだった。 「私と愛唯が仲良いのも知ってるから、余計気に入らないんじゃないの?」  確かにと思った。 「そっか。だからか」 「愛唯、大丈夫? 他にひどいことされてない?」 「うん」  千郷はまだ疑いの目で見てきたけれど。 「千郷に聞いてもらって楽になった」  誰にも言えないで悩んでたから。 「話だけなら絶対聞くから」  私は肯いた。 「愛唯にひどいことしたら、駆けつけて殴りに行くからね」 「ありがとう。私、がんばる」  千郷に勇気をもらったから、もう大丈夫だと思った。 「千郷大好き」 「私もよ。愛唯、大好きよ」  泣きそうになった。瞳の中が少し潤んでいたのは、千郷には内緒だ。  その後私たちはめいっぱいお出かけを楽しんだ。ウィンドウショッピング、食事、カラオケ。  あっという間に時間は過ぎ、別れるのが惜しくなった。 「また冬休み会えるよ」  と千郷は言うけれど、私はやっぱり寂しかった。 「うん。長いなあ。寂しいよ」 「なんかあったら、絶対言うんだよ」 「うん。ごめんね」 「謝ることじゃないでしょ」 「うん。ありがとう」  千郷はにっこり笑って帰っていった。私は千郷に手を振りながら電車に乗って、帰宅した。
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