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走って去ろうとしたら、北村君に袖を掴まれた。
「待てって。あの調子じゃ、この前のカラオケの時からなんか言われてたんじゃないのか?」
鋭い指摘にたじたじになった。
「ほら。図星」
「ほっといてって言ってるでしょ」
そう言うしかなかった。
「愛唯ちゃんって文化祭でも一人でいるし、もしかしてハブられたりしてる?」
ハブられてるのはホントだったけど、一人も友達がいないみたいな言い方にカチンときて、ついタメ口で言い返してしまった。
「しょうがないでしょ。友達は引っ越しちゃったし、わざわざ文化祭にまで呼べないもの」
千郷は簡単に会える距離じゃないし、会うのは冬休みまでおあずけだ。
「何だ。安心した」
「は?」
意味がわからなくて聞き返した。
「友達いないのかと思ったから」
やっぱりそう思ってたんだと思って北村君を睨みつけた。
「ごめん。それなら俺と仲良くしてくれるかなーっていう下心」
北村君の言ってることがよくわからなかった。
「ねえ、連絡先教えて」
「何で」
「まだ知り合ったばかりだから、とりあえず友達から、ね」
私は困った。突っ返すのは簡単だったけど、何故だかしちゃいけないことのような気がした。
「それに、今みたいにタメ口で話してよ。その方がいいよ」
「うん」
ずっと男子が苦手だったけど、北村君なら大丈夫かもしれない。男子に慣れるためにもメールから始めてみようと思い、無料通話アプリMAINの登録をし合った。ほとんど連絡など来ないだろうと高をくくっていたが、家に帰ったらすぐに連絡が来ていて驚いた。しかも、一度返すとすぐに返事が来る。千郷よりもマメなので、困ってしまった。マメじゃなくても千郷の方が好きだけど。
って何考えてんの私。
気付かないうちに千郷と北村君を比べている自分がいて、嫌になった。別に北村君とは知り合ったばかりだし、好きとか嫌いとかないし。
その後も北村君からしつこくメッセージが来るので、さすがに何返していいかわからなくなって、しばらくほっといたら、『迷惑だった?』なんてメッセージが送られてきて更に困った。
用がある方が楽で、他愛ない会話の方が難しいと気付いた。北村君が何を好きかもわからないし、提供する話題がないのだ。
『別に迷惑じゃないけど、私と話しても面白くないよ。特に話すことないもん』
そんな風に返事を返しておいた。
風呂から出たら、返事が来ていた。
『迷惑じゃないならよかった。つまらなくなんかないから大丈夫。別に何の話題だっていいって。今日は天気だとか。推しの話でもね☆』
星がついてるのは友達感覚なのかな。私はやっぱり何を返すか悩んでしまった。
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