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私たちは、イベント開始前の会場に足を踏み入れた。コミケ以外にも小さいイベントはいくつか参加したことあるけど、設営から参加するなんて初めてだったので、新鮮だった。
会場に人はまばらで、サークル参加者と、設営のスタッフが忙しなく動いていた。私たちも早速北村君の知り合いのスペースに移動した。
1サークル長机半分、椅子2個のようで、『天使の歌』というサークル名で活動しているらしい女性が一人準備をしていた。
私はちょっと緊張しながら、あいさつをした。
「は、はじめまして狩屋愛唯と言います」
「はじめまして。私は吉田よ。維之介のお友達?」
「はい。よろしくお願いします」
「よろしくお願いしたいのはこっちだから。愛唯ちゃん、よろしくね」
吉田さんは、北村君のお姉さんのお友達らしい。北村君とも何度か会ったことがあるとか。そんなことを話しながら、お手伝いの説明も受けた。
同人誌のそれぞれの値段のポップを作ったり、ペーパーを並べたり、ポスターを設置したりと、地味な作業だ。
サークルってこういうことしてるんだ。すごく勉強になった。私は本なんて作ったこともないし、絵だって描けないから、自分でサークル参加することはないだろうけど。
今日の新刊ということで見せてもらった表紙のミキヤが色っぽかった。私が普段読んでるのは普通に仲間たちで絡んだり、日常だったり、ギャグなんかもあったから、そのギャップに驚いた。
中身はあまり説明したくない。とにかくミキヤが色々大変なことになっていた。
吉田さんのペンネームは丸山ネネネと言うようだ。オリジナルのBL漫画も描いてるみたいだから、今度見せてもらおうと思った。
準備が滞りなく終わった後、売り子もして欲しいと言われて私は戸惑った。接客なんて私にできるのかな。
「基本は私もここにいるし、ちょっとだけ他のサークル回る時もあるけど、そん時だけだから。北村君もいるし、お願い」
手を合わせてお願いされたら、引き受けないわけにはいかない。
「わかりました」
私は仕方なく了承したのだった。
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