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昼休みの弁当の前に手を洗ってから廊下を歩いていたら、私を呼ぶ声が聞こえた。
「ねえちょっと、狩屋さん」
振り向いたら斉藤さんだった。
「何?」
「しーっ! あいつら来ちゃうから」
あいつらが山田さんと三島さんなのはすぐにわかった。
「何かあったの?」
「別に。ただうるさいから逃げてるの」
リンチにでもされたのかと思ったので、ほっとした。
「ねえ、屋上の階段下でお昼食べない?」
「え?」
そんなところで食べたことがなかったので驚いた。
「穴場なの。あいつらも知らないとこ。狩屋さんに聞いて欲しいことあって」
私は仕方なく肯いた。斉藤さんは既に弁当を持ってきてたから、私だけ教室に取りに戻ってそのまま2人で移動した。
屋上は鍵がかかっていて入れないけど、その手前の階段下にこんな穴場スペースがあったなんて中学から5年も通っていて全く知らなかった。
そもそも弁当はほとんど一人教室で食べていたから関係ないけど。
「あのカラオケの後、聖君って男子と2人で抜けたんだけどさ」
斉藤さんは突然そんなことを言い出した。
「狩屋さんの言ったとおりだったのよね」
「え?」
何の話かと思った。
「やることしか考えてないって言ったでしょ。ホテルに連れて行かれそうになったの」
ホテル……。そんなリアルにお持ち帰りっていう現実があるなんて本当だったんだ。私、当てずっぽうで言ったのに。
「びっくりした」
「私もよ。んで、怖くなって逃げ帰ったの」
斉藤さんは遊んでるのかと思ったから意外だった。
「どうせついていったのかと思ったんでしょ」
「うっ」
目ざとい。
「いいわよ。私も垢抜けてるみたいに思われたくていつも見栄はってたから」
斉藤さんはあっけらかんと言った。
「でも、今日知り合ったばかりでよく知らない人とやるなんて無理って思って。はじめては好きな人がいいじゃない」
はじめてなんて想像したこともなかったので、私は何も言えなかった。
「あの2人はやったらしいのよね。しかも、今回がはじめてじゃないみたい。そんな話私聞いたことなかったから、合わせるのに必死だった。でも、なんか、疲れちゃった」
その事実に愕然とした。初体験早い子は早いって聞いたことあるけど、まさか女子高、しかもお嬢さま学校と呼ばれるうちでそんな子がいるなんて。
「そんであんたに八つ当たりしたりして、悪かったと思ってるわ」
斉藤さんにそんな風に謝られるなんて思ってもみなかったから驚いた。
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