6人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
新たな友達
帰りも沙織に誘われ、途中まで一緒に帰った。
「私、面白い話もできないし、あの2人の言うとおりオタクだけど、本当にいいの?」
「そんなことどうだっていいよ」
沙織は続けて言った。
「すぐネガティブに考えるのが愛唯の癖じゃない? だから今まで1人だったんでしょ?」
「うっ」
痛いところをつかれた。
「そんな慎重さも大事だけどさ」
斉藤さんは1拍置いてから、急に真面目な顔をして話し出した。
「私さ、今までちゃんとした友達いなかったんだなと思って」
沙織が言うには、今までその場限りの友達しかいなかったという話だ。山田さんや三島さんとも、なんとなく一緒につるんでいたけど、それは1人になりたくなかったからだという。学校で1人でいると、浮いてしまったり、無視されたりするから、いつも一緒に行動する人が必要なんだとか。私はそんなこと全く考えたことなかった。
「愛唯は空気読めないもんね。考えたこともないと思ったよ」
沙織に分析されてしまってるのがちょっと面白くないけど、おおむねその通りだった。
「むう。なんか馬鹿にされてる感じ」
「ふふっ。でもそれが愛唯のいいところだと思うんだよね。ちゃんと自分があって、流されたりしない」
そうなのかな? 自分ではわからない。
「正直なところ、西村さんに突っかかったのって、それがうらやましかったんだよね」
「え?」
そこで千郷の話が出てくるとは思わなかった。そういえばこの前斉藤さんとやり合ったことがあるって聞いたな。
「西村さんは、自分の意見を通すじゃない。嫌なことは嫌ってはっきり言うし。私はすぐ流されちゃうから。2人がそうならそうしようって、みゆきと結奈に合わせてた方が楽だったから。はぐれるのが怖かった」
沙織がそんなこと考えてたなんて知らなかった。普段はこんな話しないから、私は驚きの連続で、言葉が出てこない。
「愛唯は1人でいるのを怖がったりしないから、強いなって。それなのに、文化祭のとき男子と仲よさそうだったからずるいって思っちゃったんだよね。普段1人のくせにちゃっかり男子と仲良くしてるってさ。この前カラオケでうまくいかなかったから余計にね」
そうだったんだ。やっと沙織が私に突っかかってきた理由がわかった。私は何も言えなくなってしまった。
「だから、今更虫がいい話かもしれないけど、仲良くしたいなって」
「そんなことない!」
私は大きな声で言った。
「そんなことないよ。今更とか全然ないよ。私だって、千郷がいたから1人で平気だっただけだもん。千郷にいつも愚痴いっぱい聞いてもらってた。強くなんかないよ」
「ふふっ。そういうことにしとく」
「もう!」
沙織が本音で話してくれてすごくうれしかった。学校がもっと楽しくなりそうな予感がした。
最初のコメントを投稿しよう!