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土曜日になってたまりにたまった積もり話を千郷に電話で話したら、こんなことを言われた。
「斉藤さんが改心したの? 信じられない」
「ほんとだって」
改心というのは大げさだったけど、今までのことを謝ってくれたし、私と仲良くしたいって言ってくれた。すごくうれしかった。
「この目で見てみないと信じられませーん」
「え?」
「ってわけで、今度の冬休み、一緒に会わせて!」
「い、いいけど」
千郷がそんなこと言ってくるなんて驚いた。
「私だって、愛唯と斉藤さんがそんなに仲良くなってるなんて、妬いちゃうんだから」
「別にそんな……」
「くうっ。敵はいのっちだけかと思ったのに、そんなとこに思わぬ伏兵がいたとは」
何それ。言い方が笑えるんだけど。
「いのっち?」
「北村君のこと。いのすけって名前でしょ?」
ああ、そういうことね。
「あ、そうだ。その北村君だけど」
私はこの前のイベントのことも話した。
「何! 愛唯とデート」
「で、デートなんかじゃないって。ただ、手伝いに参加しただけだから」
「それを口実にするよくない臭いを感じる」
千郷は犬の真似をしてクンクンなんてやるからまた笑っちゃった。
「もう! 千郷」
「とにかく、愛唯は無防備なんだから気をつけてよね」
そんなことないと思うけど、そうなのかな。
「くれぐれもホテルに連れ込まれたりしないように」
「それって」
沙織の話なんじゃと思ったけど、口をつぐんだ。勝手に千郷に言っちゃまずいよね。それに、心配かけそうだし。
「ん?」
「そんなこと絶対ないと思うけど、気をつける」
「うんうん。よしよし」
今度千郷に会うのが楽しみだと思った。
月曜日、沙織にも千郷が会いたがってることを伝えた。
「いいわよ。全然。バチバチライバル心燃やしちゃうかもしれないけど」
「え?」
「冗談。冗談。それより、そんなことメッセージで言えばいいのに」
「あっ。忘れてた」
そういえば沙織とMAIN交換したんだった。
「ちっとも連絡来ないから、嫌われたのかと思っちゃった」
「ごめん」
「なーんてね。私も土日たまたま忙しかっただけ」
沙織は舌を出した。もう、びっくりさせないでよ。
「また口膨らませる」
沙織は私のほっぺたをプチッと押してきた。
「や、やめてよ」
「愛唯ってほんと面白い」
「からかうのやめて」
「ふふっ。その顔がかわいいんだもん」
ふふって笑うの沙織の癖かな。まあ、褒められたからいいか。私って単純かもしれないと思った。
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