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飲み物を半分くらい飲んで落ち着いたところで北村君は話し始めた。ちなみに私が頼んだのはキャラメルフラペチーノ。冬なのに冷たい物を飲むのが通なんだよね。なんてね。
「笑っちゃって」
ん? 気付いたら北村君が喋っていて、我に返った。あれ、今なんて言った?
「愛唯ちゃん、聞いてる?」
「ごめん。キャラメルフラペチーノに気を取られて最初の方聞いてなかった」
「全く」
私はごめんと何度も謝り倒した。
「愛唯ちゃんが聞いてきたんでしょ。私のどこがいいのって」
そうだった。それを答えてくれようとしたのに、私何やってんの。馬鹿馬鹿馬鹿。
「ホントにごめん」
「ま、いいけど。次はちゃんと聞いてよ」
「うん。絶対聞く」
私は北村君の方をじっと見た。しばらくまばたきせずに見ていたら、北村君が言った。
「そんなに見られちゃ話しにくいんだけど」
だって一言一句逃さないようにしようと思ったんだもん。
「愛唯ちゃんはちょっと極端だから。その中間でお願いします」
中間って言われても。とりあえず自分の考えに没頭しないように気をつけようと気持ちを改めた。
「んで、さっき言ったのは、最初のカラオケの時の話。愛唯ちゃん帰った後、俺笑っちゃったんだよね」
その話は初めて聞いた。
「他の奴らからは何笑ってんだって詰め寄られたけどね」
そうなんだ。そんなことがあったんだ。
「他の女子はどうしてたの?」
気になって聞いてみた。
「あの子空気読めないから、ごめんなさいって取り繕ってた。別にいいと思うけどな。全員が全員同じ調子で合わせてたって面白くないじゃん。こんな子いるんだなって俺は印象に残ったけどね」
やっぱりそうだったんだ。まあ、女子たちが私のことをなかったことにしようとしたんだろうことは予想できたけど。
「まさかコミケで会うなんて思わなかったけど」
あれはやっぱりただの偶然だったんだ。
「文化祭は、知り合いが行くって言うから着いてった。愛唯ちゃんに会えるかなと思って」
その時から私に気があったのかな。なんて聞けなかったけど。
北村君は別のことを言った。
「俺、愛唯ちゃんみたいな純粋な子初めて見たんだよね」
「純粋?」
全然自分がそんな風に思ってなかったので、聞き返してしまった。
「そう。最初にあんなこと言ってたのに中身は純粋。だからそのギャップに惹かれたのかもな」
やっぱり照れる。恥ずかしくなって顔が火照った。
「そういう、慣れてないとことかも、ツボなんだけどさ」
ツボ?
「まあ、ゆっくり考えてくれればいいから」
私はいまいち北村君の言うことが飲み込めなかった。
「もしかして通じてない?」
北村君は苦笑した。そんなこと言われても知らない。
「俺と付き合えるかじっくり考えて欲しいってこと」
つ、付き合う?
想像したこともなくて、頭から火が出そうになった。
「そんな思い詰めた顔しなくていいから、ゆっくり考えて」
ゆっくりって言われたって、困るよ。
「しばらくは友達でもいいよ」
友達って。もう友達じゃないよ。無理だよ。さっきからずっと、なんていうか、ムズムズする。こんな状態慣れそうになかった。
「少し時間をください」
「それって考える時間ってこと?」
「今、この状態が既に無理だから。こうやって普通に会うのも」
難しい。助けてと思った。つい千郷と沙織に助けを求めたくなってしまった。
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