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「そっか」
北村君が急にがっかりし出して、私は戸惑った。
「やっぱりちょっと早まったかな。でも、時間かけるといつまでも意識してくれないと思ったからな。友達のまま彼氏できましたなんて言われたら目も当てられないし」
「できるわけないでしょ」
北村君のつぶやきについ突っ込んでしまった。
「そんなのわかんないじゃん。俺より強引な奴がガンガン押してくるかもしれないだろ。何でも早い者勝ちなんだよ」
そう言われると何も言えなかった。確かに北村君の言うとおり、私はお人好しで流されやすいかもしれない。
「別に会わないって言ってるわけじゃないし」
と言ったら、急に嬉しそうになった。
「じゃあ、年明け初詣」
「却下」
「嘘つき」
「早すぎるの!」
北村君はすぐ調子に乗る。
「そんなんでいいよ」
「え?」
「普通に会話できてただろ? だから無理に意識することないって」
「うん」
さっきは意識して欲しいって言っていたのに、言葉に矛盾も感じたけれど、北村君が気を遣ってるのがわかったから何も言わなかった。
結局スタバは奢ってもらった。冬コミ前でお金使いたくないのをわかったのか、年明けに代わりに奢ってって言われた。初詣は遠慮したけど、またお出かけはしようという話になった。
夕飯は懐事情に優しいファミレスにした。
「本当は豪華ディナーにしたかったけど、愛唯ちゃん奢らせてくれなそうだし、俺もそこまで金持ちなわけじゃないし」
「全然。十分だって」
色々あったけど、楽しかった。
「今日は付き合ってくれてありがとう」
「ううん。楽しかったよ」
「良かった」
北村君は微笑んだ。
「おやすみ」
なんて別れ際に言われて、やっぱり照れてしまったのだった。
帰りの電車の中で、『今度こそ名前で呼んでね』なんてメッセージが来て笑っちゃったけど。
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