事件は突然に

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事件は突然に

 1月後半の土曜日、夕方に突然沙織から電話があった。 「愛唯、ちょっと聞いて欲しいことがあって。今時間大丈夫?」  珍しく真面目な口調で、何かあったのかと心配になった。 「大丈夫だけど、どうしたの?」 「あいつら、みゆきと結奈から連絡があったの。助けてって」 「え?」  どういうことかと思った。2人はもう沙織と離れていたはずなのに。 「知らない人に閉じ込められたって。スマホ隠してたから見つからなかったけど、なんとか私に電話かけたって言うの。3人で良く行ってた古着屋さんの近くだって言うんだけど」 「何それ」 「罠かもしれないって思ったの」  罠? どういうことなのかと聞き返そうと思ったら、すぐに沙織は言った。 「だって、しばらく連絡してなかったのに、急にかけてくるのおかしいでしょ? 他の人に連絡すればいいと思うし」  確かにそうかもしれないと思った。 「でもね。もしかしたら本当かもしれない。本当だったらほっとけない。だからね」 「そんな、沙織!」 「一応あんたに伝えとく。もし、私に何かあったら、しばらく帰ってこなかったりしたら、警察とかに言って」 「沙織、1人で無茶だよ。待って」 「あんたを巻き込みたくなかったんだけど、ごめんね」  そこで通話が切れた。嘘。もう一度電話をかけたけど、沙織は出なかった。何度かけても同じで、そのうち電源が入ってないというアナウンスに変わった。  どうしよう。沙織に何かあったら。もし、罠だったら。  私はしばらく混乱していたけど、そんな場合じゃないと思い、北村君に電話をした。千郷は静岡に帰っちゃったし、この場合北村君の方が頼りになるかもしれないと思ったからだ。
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