事件は突然に

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 しばらくして北村君から電話があった。 「山田と三島って奴と消えた男どものことわかったよ。俺が帰った後、お持ち帰りしたらしいって」  北村君が言うには、三木君と周防君という人たちが、山田さんと三島さんと付き合ってるらしい。  その男子たちの連絡先を聞いたようだ。 「どうする? 俺がかけてみてもいいけど、最悪面倒なことになるかもしれないし」 「沙織、その人たちのとこにいるの?」 「それはわからない。とりあえず、愛唯ちゃんのとこ行くからさ」 「じゃあ、中間の駅で会おうよ」 「いいけど」  私の家に来られても困る。今日は父親もいるし、北村君のこと説明できない。  だから、お互いが住んでいる場所の真ん中辺り、武蔵小杉駅で待ち合わせすることにした。  今日は歌うためじゃなく、密室の方が都合がいいため、カラオケボックスに入った。 「多分愛唯ちゃんが電話した方がいいよ。警戒心が緩まるし」 「でも、もし切られたりしたら」 「そうなる前になるべく代わって」  私は肯いて、その男子に北村君の携帯で電話をかけた。私の番号は知られない方がいいから念のためらしい。 「もしもし」 「あの、私狩屋って言って」 「狩屋?」 「ちょっと代わって」  電話の奥から知ったような声が聞こえた。すると、すぐに女の声で電話に出た。やっぱり山田さんだ。 「あら、狩屋さん?」 「沙織、沙織は?」 「沙織どうなったと思う?」 「どこにいるの?」 「あんたが来たら返してあげてもいいよ」 「どこ? どこなの?」 「タナカ中央倉庫21番よ。誰か連れて来たりしたら沙織がどうなるかわからないからね」  そこでブチッと電話が切れたのだった。 「北村君どうしよう。沙織、何されたのかな?」 「落ち着いて、ちゃんと俺に報告」 「うん」  やっぱり罠だったみたいだと告げると、 「無防備に行くんじゃねえよ。全く」  と北村君は悪態をついた。私も同じ気持ちだったので、とやかく言えなかった。  とりあえず言われた倉庫の名前を伝えた。 「それも罠だろ」  私は肯いた。 「だと思うけど」 「沙織の声が聞きたいとかって、もっと引っ張れなかった?」 「ごめん。そこまで考えてなかった」 「まあ、仕方ないけど」  北村君はスマホで倉庫の場所を調べた後、 「下北沢みたいだな」  とつぶやいた。私にも地図を見せてくれたので場所がわかった。そこに本当に沙織がいるんだろうか。 「1人で行くって思わせた方がいいと思う。俺、応援呼ぶわ」 「応援?」 「俺のだちと、その周辺」  北村君の友達のお父さんが警察官だって聞いて驚いた。 「警察に言うの?」 「最悪の場合。とりあえずだちに連絡してみるよ。あいつ柔道五段だし」  北村君ってそんな友達がいるんだ。  その友達、羽山君は、北村君が呼んだらすぐに駆けつけてくれた。私たちも指定された倉庫のある下北沢に移動した。  下北沢駅で羽山君と落ち合って、綿密に作戦を立てた。  おとり作戦ということで、私がおとりになるみたい。ちょっと怖いけど、北村君が絶対守るって言ってくれた。
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