事件は突然に

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「愛唯ちゃん、俺たちが突入するまで耐えてね。暴れたりしないでよ」 「うん」  そんな作戦を台無しにすることしない。 「スマホは壊されたりしたら危ないから、預かっとく。代わりにこれ」  渡されたのは、防犯ブザーだった。 「どうしてもやばいってときだけ押して。殴られるとか、犯されるとかってとき。すぐに駆けつけるから」  犯される? そんな事態を想像して身震いがした。 「絶対そんなことさせないから、信じて」  私は北村君を信じようと思った。  指定された倉庫は、外観が薄汚いビルの二階にあった。エレベーターは故障中という張り紙が貼ってあったため、非常階段で上った。  二階には三つほど部屋があった。その中の一つに21番と書いてあった。中で話し声がした。  山田さんだ! と思って、私は反射的に扉を開けていた。そこは何もない広々とした空間だった。やはり沙織は見あたらない。 「沙織はどこ? 返して」 「あんたのこのこと1人で来たの? 馬鹿じゃない」  山田さんがケタケタと笑った。その隣に三島さんもいた。  奥には男が2人座っていた。やばい。私一人じゃ勝ち目ないかも。当初のおとりという目的を忘れて、身構えた。 「部屋に連れてって縛って」 「ほら来い」  知らない男に後ろから羽交い締めにされた。体を動かそうとしても動かなかった。気持ち悪くて殴りつけたかったけど、北村君に言われたことを思い出した。暴れちゃ駄目だった。いけない。  ポケットを探られた。スマホがないか確認したのだろう。防犯ブザーはパンツの中に入れてたから無事だった。でも、縛られたりしたら、どうやって押せばいいの?
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