事件は突然に

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「じゃあ謝れよ」 「ご、ごめんなさい」  そんなことしなくていいのに。 「そうじゃないだろ」  山田さん、男みたいなしゃべり方。 「裏切ってごめんなさい」 「心がこもってない」 「ごめんなさい」  沙織、やめてと思った。 「わかんないみたいだね」  私、山田さんたちを絶対許さない。 「その女の腹に一発入れて」 「やめてー!」  え? もしかして私?  さっき口を縛ってきた男が私に近付いてきた。嫌だ嫌だ。何すんの。 「んんんんんっ」  ブザーも押せない。どうしよう。助けて! 「何でもするから、やめてください。お願いします。裏切ってごめんなさい」  沙織の悲痛な声が聞こえて、苦しかった。 「やっとわかったみたいだね。やめていいよ」  男がちって顔をした。そんなに私を殴りたかったの? そう思ってすごくむかついた。私は、縛られたままで、男に頭突きを食らわせた。 「うっ。ふざけんなこのあま」  取り押さえようとしてくるけど、必死で暴れた。そうだ。この男が入ってきたんだから、ドアは開いてるはず。  走ってドアまで行った。でも、すぐに追いつかれて後ろから捕獲された。嫌だ嫌だ。くっついてるだけでも気持ち悪い。 「いい加減大人しくし」  と男が言いかけたところで、男が転んだ。 「大丈夫、愛唯ちゃん」  北村君だった。 「んんんんんっ」  まだ口が利けなかったので、北村君が口のタオルを外してくれた。 「沙織、沙織は」 「大丈夫。羽山が行ってる」  でも、1人で大丈夫なの? と思ったら、男が北村君に向かって来た。 「てめえ、何なんだこのや」  また男が言い終わる前に、北村君は男を蹴り上げた。私も一発入れてやんなきゃ気が済まなかったので、倒れた男を踏みつけてやった。 「愛唯ちゃん。えげつな」 「そんなことより沙織」 「下の部屋だよ。急ごう」  北村君に案内され、33番と書いてある倉庫の中に入った。  そしたら、あっけなく終わってた。  男2人は床に倒れていて、山田さんと三島さんは、沙織に詰め寄られてたじたじだった。羽山君が全部やったんだろうか。柔道五段って言ってたけど、強い。  沙織が私に気付いて駆け寄ってきた。 「愛唯、よかった」 「沙織、大丈夫?」 「うん。ごめんね。いっぱい迷惑かけて」 「そんなのいいよ。水くさいじゃん。無事でよかった」 「愛唯」  沙織は私を抱きしめながら泣き出したので、私ももらい泣きしてしまった。
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