事件は突然に

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「ちょっと、そこのレズたち」 「レズじゃない!」  北村君がくだらないことを言ってきたので返したら、ある方向に指を指した。ちょうどそこにいたのは山田さんと三島さんで、入口の方に移動しようとしていたが、羽山君が腕を掴んで止めていた。 「どさくさに紛れて逃げようとしてんぞ」 「山田、三島!」  と叫んだのは沙織。2人はびくっと肩を奮わせた。 「放してよ!」 「やめろって」 「こいつらどうすんの?」  羽山君に聞かれて、答えようとしたら、 「焼き入れてやる」  と言って沙織が2人に近付いていった。 「絶対許さないから」 「た、助けて」 「つい、魔が差して」 「ふざけんな!」  私も沙織と同じ気持ちだったので、何も言えなかった。  沙織はほっぺたを1人ずつバシッと叩いていた。  良く見たら沙織のほっぺたも少し腫れていた。それを見て私も怒りが湧いてきて、2人それぞれの腹に蹴りを一発ずつ入れてやった。 「愛唯ちゃんさっきからやることえげつな」 「うるさい」  北村君はどうしてこんな場面で茶々を入れてくるのか。 「あんたたちだって色々あるからって、今までのこと水に流そうとした。でも、今日こそは許せない」  沙織が怒りで肩を奮わせていた。 「二度と私たち、私と愛唯に近づかないで」 「私だって許せない。沙織の頬に跡が残ったら一生恨むから」  私も2人ににじり寄った。2人の顔色は蒼白だったけど、今度は全く同情できなかった。 「うっ。放して」 「何でも、何でもするから」  さっきの沙織と立場が逆転していた。私はそれを見ても何も感じなかった。それこそ自業自得だと思った。 「放していいわよ」 「沙織?」  私は耳を疑った。 「次はないから。今度こんなこと起こったら本当に殺してやる」 「し、しない」 「誓うから」  この人たちの言うことは信じられないと思った。 「別にいいのよ。今度愛唯に近付いてご覧なさい。死んだ方がよかったと思うくらいの地獄を見せてあげる」  沙織は2人のそれぞれの首を両手で掴んだ。 「うっ」
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