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コミケでの出来事
夏休みに入るとすぐ、千郷から連絡が来た。千郷は私と違ってコミケには興味がないので、コミケが終わった二日後に会う約束をした。
ひとまず推しに命を賭けるぞ! と意気込んだ。
そして臨んだコミケ当日。
ある程度目当てのサークルを周り終え、次はどこに行こうか悩みながら歩いていた。
「ねえねえ、君さあ」
急に声をかけられ驚き、私は反射的に振り向いた。そこにいたのは、全く知らない男子だった。自分と同じか少し上くらいの。
一体誰? 本当に私に用があるの? 人違いじゃないのかと思い、首をかしげた。
「あのさ、外国語発表会の打ち上げ、カラオケ来てたよね?」
「え? ええーっ!」
何で二次会に参加してた慈恋舞高校の男子がここにいるの? あの時はいちいち人の顔など見ている余裕もなかったから、目の前の男子のことなど全く記憶になかった。
私はカラオケでの失言を思い出し、軽くパニックになった。
「あれは、その、人違い、いや、その」
「あはは。隠すことないって。あれ、面白かったよ。みんなひいてたのが特に」
だから嫌だったのだ。絶対からかわれると思った。
「忘れてください」
私は必死であの時は別人だという振りをした。
「えー、爽快だったのに。男はやることしか考えてないって。心理だよね」
「もうやめて」
聞きたくなくて、私は耳を塞いだ。
「まあ、俺も普通にやりたいとは思ってるけど」
「そうなんですか?」
つい聞き返してしまった。本当は男子とほとんど話したことなんかないから、漫画や本だけの知識で適当に言ったのだ。
「むしろ否定する男子の方がやばいと思うよ」
そうなのだろうか。私にはよくわからない。
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