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「もしかして、BLとか好き?」
と急に聞かれて驚いた。BLとは、男同士の恋愛物を描いたジャンルだが、好きなのは女子がほとんどで男子からその話題が出るとは思わなかったからだ。
「き、嫌いなわけじゃないけど、どっちかっていうと好きだけど、でも、それよりも推しに命かけてます」
「え?」
「パンストのミキヤ君。尊いでしょ」
私がそう言うと、男子は一呼吸置いて言った。
「ああ。そういう系」
「そういう系?」
「ゴホン」
何故かその男子は咳払いをして、続けた。
「パンストは読んだことないけど、知ってるよ。へえ」
さっきから、馴れ馴れしい。今日まで話したこともなかったのに失礼だなと思った。
「えーと、その、あなたは」
そもそも名前も知らないのだ。
「ああ。俺? 北村維之介。慈恋舞高校の2年」
「同じですね」
年上かと思ったので、少し意外だった。
「ん?」
「その、学年」
「ああ。君も2年なんだ。じゃあ、タメ口でいいよ」
「遠慮しときます」
「何で?」
「知らない人だから」
私は困って下を向いた。男子は苦手だ。
「今知ったじゃん。今日で会うの2回目だし。そういえば、君の名前は?」
なんか、どこかで聞いた映画のタイトルみたいだ。なんて場違いなことを考えた。
「聞いてる?」
私は仕方なく答えた。
「か、狩屋」
「下は?」
「あ、愛唯です」
「あいって愛するの愛?」
「いえ、愛に唯一の唯を付けて愛唯です」
「へえ。珍しい」
「説明するの面倒なので、その名前嫌いです」
名付けてくれたお母さんには悪いけど。
「愛唯ちゃん、よろしく」
よろしくしたくないと思ったけど、私は仕方なく愛想笑いを浮かべた。
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