千郷と会う

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千郷と会う

 そして、二日後。千郷にコミケで男子と会った話をした。  久しぶりに会って積もる話もあったけど、一番近い日のことをすぐに話したくなるのは仕方のないことだと思う。 「へえ」  千郷は相づちを打って、それから、 「面白いね。その子」  と言った。 「面白い?」  私にとってはうんざりとした出来事だったのに。 「愛唯はまだ男子苦手なんでしょ?」 「だって」  それ以上言えなかった。千郷が言うことはもっともだし、もちろん自覚もしていた。中学、高校と女子校だから男子とほとんど接点がなかったし、実を言うとその前の小学校の頃から苦手だった。男子とほとんど話したこともないし、あまり良い思い出もない。 「まあ、そこがかわいいんだけど」 「え?」 「ナンパじゃないの?」 「ナンパ?」  そんなはずない。 「違うって。たまたまカラオケで変なこと言ったからからかわれただけだって」 「そうかなあ」  千郷はそんな風に言ったけど、それ以上余計なことは言わなかった。私もその話はここでやめておいた。他に話したいことはいっぱいある。  千郷の話も聞いた。千郷の高校は共学で、結構男子と話すようだった。  どうして性別が違うのに気軽に話せるんだろう。やっぱり私には無理だ。理解できない。元々千郷の方が明るいし、積極的だもん。性格の問題かもしれないなと思った。私はどうしたって千郷のように振る舞えないんだから。  千郷は転校しても楽しそうだった。いいなあ。千郷がうらやましいというよりも、新しい友達がうらやましかった。私より仲良い友達ができたらどうしようと、どうしても嫉妬してしまう。どうしたって学校が違う壁は埋められないのだ。  私には何でも話せるような友達は千郷しかいない。学校の友達とはやっぱり違う。でも、きっと、千郷はすぐに新しい高校でも仲の良い友達ができるんだろうな。寂しいな。 「愛唯、どうしたの?」 「私も千郷と同じ高校が良かった」 「愛唯……」 「ごめん。今の嘘」  千郷を困らせる気はなかったのに、気付いたら口をついて出てしまった。最近学校で人間関係がうまくいっていないから、余計ナーバスになっていたのかもしれない。 「愛唯、何かあった?」 「別に何も」 「愛唯?」  心配かけたくなかったから、クラスで孤立しているという話は、まだ千郷には言ってなかった。
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