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 コンクリート打ちっぱなしの外壁はすこし古くさく感じた。それでも単なる1Kにとどまらない独特の間取りが琴線にふれた。  壁はブルーグレーのアクセントクロスで統一されていた。角に出っ張った柱がある面は、その出っ張りを利用してテレビボード収納が造り付けてある。ランダムに棚が配置されたテレビボードは床から天井までをお洒落に彩っていた。  八帖の部屋の上部はロフトになっており、換気用の小窓と天窓まである。最上階でもないのに煙突のように伸びた空間が天窓に続いている。おかげで部屋はかなり明るい。 「もうここに決めます」  案内してくれた不動産屋のお兄さんにそう告げると、不動産屋のお兄さんがうなづいた。 「ええ、僕もここまで良いとは思いませんでした。これから回る予定の二件はキャンセルしましょうか」 「はい」 「では、急ぎ申込書を作成しますね。お名前入力いたしますが、読み方は高階廉(たかしなれん)様でお間違えないでしょうか?」 「はい、大丈夫です」 「かしこまりました」  いざ部屋を見渡すと、ルームクリーニングが行き届いており、床も壁も傷ひとつない。 「部屋もかなり綺麗ですよね」 「そうですね。外も綺麗でしたし、管理が行き届いていますね。天窓もああやって漏水しないよう手入れできるようにしているのでしょう」  手のひらが向けられた先を見ると、天窓へ続く空洞に梯子のような把手がつけられていた。なるほど、その管理まで計算されているのか。  思わず顔がほころんでしまった。  5人兄妹の家に生まれた俺には自分の部屋なんてものはなかった。それはそれで楽しくもあったが、自分の空間への憧れはずっと心にあった。  晴れて社会人となり、一人暮らしの住まいにはこだわりたかった。  お洒落で安心。  こんな家に住めたら、あとは素敵な彼女ができたらいいな。  再来週から厳しい社会人生活が始まるのに、心躍る私生活を想像してしまう。
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