エピローグ

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エピローグ

 何その変なテンションと通話画面の向こうに伝えれば、相手はだってナナハくん全然元気なさそうだからさと言う。  そりゃあ色々あって元気なんか出るわけがない。だからはとこに相談してみようとナナハは思いついたのだけど、相手を間違えただろうか。 「まあそういうとこだから、興味があったら来たらいいよ。うちも部屋は空いてるし」  それで転校することにした。高校も星分(ほしわき)市の方に行こうと決めて親を説得した。  小さい頃からナナハの魔法を気に掛けてくれていた魔法使いにも別れを言って、手紙を書くからと約束して。切手を自分で買ったことがないな、とナナハはぼんやり思った。  星分市の駅の改札を出て、市章が付いた旗と一緒に虹色の旗が駅前の広場に立てられているのがすぐ目に入った。  旗を掲げたところで口ばっかりかもしれないし。両親くらいの年齢の人とか話が通じなかったりするし。同世代だって腫れ物に触るみたいな、扱いかねる様子がありありとわかるし。ナナハを取り囲んでいるものたちを思い出して、心臓が誰かにつつかれたみたいに痛んだ。髪が風を孕んで、危うく魔法を使いそうになってしまうのを抑え込む。まだナナハの魔法はナナハ自身の感情に引っ張られやすいのだ。  緊張しながら辺りを見回して、はとこの姿を探す。どうせいつも通り白衣を着ていてすぐわかるだろう。ほら、 「クロエ!」  やっぱり白衣だ。  物語の魔法使いとは違って白杖を手にした魔法使いは、声に気づいてナナハに笑みを向ける。 「よく来たね。ようこそ星分市へ」 了
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