兆し

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自死した教祖の長男、渡様の左眼が教祖のような蒼い色に変わった。 兆しだ… 奥村は興奮を隠せなかった。 3年以上待った甲斐があったというものだ… 私は奇跡の瞬間に立ち会える事に歓喜した。 3年と8ヶ月前 教祖が焼身自殺を図った直後、教団は混乱の極みの中にあった。 警察とマスコミの対応に奥村は忙殺されていた。 忙しすぎて、当日の記憶がほとんど無いくらいだった。 ただそれは教祖を失ってしまった喪失感のせいもあったのかも知れない… の班長が奥村の元を訪れたのはそんな時だった。 こんな時でも、班長はいつもと変わらぬ様子で  「教祖からの伝言です」 と一通の手紙を奥村に手渡した。 この男は佐藤といった。 何処にでもいそうな、大人しそうな青年というのが佐藤の印象だった。 とはいえ(兎)の班長をやっているくらいだから何らかの(力)の保持者かも知れない。 佐藤から受け取った手紙には教祖の直筆で次のような事が書かれていた。 奥村がこの手紙を読んでいるという事は 私はもう死んでいるのだろう… 教団の運営はお前に一任する。 主だった者達にも、その旨を伝えておくので協力してくれるはずだ。 申し訳ないが、一つ頼まれ事をお願いしたい… 数年の内に、おそらく近親者に私と同じ蒼い眼をした者が現れる。 確実にその者を確保して欲しい。 私はその者に転生する。 短い手紙の内容は、にわかには信じられないものだった。 奥村はこれまでずっと教祖の青山を見てきた。 そして今回の件で何となく、今まで自分が考えていた全てが腑に落ちた気がした 教祖はおそらく人間より神に近いのだと…
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